大切なのは、誰かに受け入れてもらっている実感だった。ひとりの独居老人とひとりの発達障害児に、共通していたこと
先日、かおりさんとごはんにいった。
かおりさんは発達障害等の子どもを教える仕事をしていたときの元同僚で、私の人生の先輩でもある。人のあらゆる面を受けとめる懐の広さと、陽だまりのような包容力がある女性だ。
かおりさんの「だいじょうぶですよ」は、最強だ。このひとことで、これでいいのかな、なるようになるかな・・そんな気持ちにさせてくれる。
自分も将来あんなふうに人を包み込めるような女性になれたらと思うけど、悟りでも開かない限りは厳しいかもしれない。
そんなかおりさんは今、お年寄り向けのデイサービスで介護のお仕事をしているという。
含蓄の深いお話を聞いたので、残しておく。
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まい:今まで子ども相手のお仕事でしたが、お年寄り相手のお仕事になったんですね。介護のお仕事は経験があったんですか?
かおり:いや、初めてなの。でもね、大事なことはおんなじなんだよね。相手が子どもでも、お年寄りでも。
まい:というと?
かおり:デイを利用している方のなかには、家族と離れて一人暮らししてる方も多くて。私も独身で生きていくつもりだし、気になってたんだよね。独居老人ってどんなこと考えてるんだろうって。
まい:なるほど。
かおり:認知症の方も多くて、会話がかみ合わないことも多いんだよね。それでもみんな、デイに来るのを楽しみにしている。
それはやっぱり、目の前の人に必要としてもらっている、受け入れてもらっていることがうれしいからなんだろうなって、みなさんと話していて感じるの。
まい:たしかに、私も介護実習をしたときに感じました。笑顔でうなずいて話を聞いて、「そうなんですね」「すてきですね」って相づちを打つだけで、おじいちゃんおばあちゃんの顔がパッと明るくなるんですよね。
かおり:そうそう。何を話したかは覚えていなくてもね、そのとき、人に受け入れてもらってるっていう実感が大事なんだなって。そう思ったとき、前職で教えてた、ゆうくん(仮名)のことを思い出して。
まい:ゆうくん!小学1年生でしたよね。
かおり:そうそう。ゆうくん、ずっとプリント課題を嫌がっていたんだけど、ある日を境にものすごく頑張るようになったの。
まい:何があったんですか?
かおり:ゆうくんがある日、風邪で授業をお休みしたんだよね。で、その次の授業のときに私が、
先週ゆうくんがいなくて、先生はさびしかったよ。
って言ったの。そしたらゆうくん、すごくうれしそうに
ぼくがいなくてさびしかったの?
って言って。そこからだよね、プリントを頑張るようになったの。
まい:へぇ。いなくてさびしかった、って言ってもらったことがよっぽど嬉しかったんですね。
かおり:そうみたい。だって、翌週もそのまた翌週も、毎回言うの。
せんせい、あのときぼくがおやすみして、さびしかった?
って。そのたびに、うん、先生とってもさびしかったよ、って言うと、すごくうれしそうな顔をするのね。
まい:かおりさんきっとそれまでも、授業のなかでたくさん彼のことをほめていたはずですよね。
かおら:うん。プリントができるたびに、たくさんほめたしシールもあげたしね。でも、その何倍もうれしかったみたい。この先生はぼくのことを必要としてくれてる、って思ったら、勉強もがんばろうってなったみたいね。
まい:なんか。。涙が出そうになりますね。。
かおり:ゆうくんのお母さんは子どものことをよく見ていて、たくさんの愛情を注いでいる方なのだけど、もの言いはきつめで、ひょっとしたら、まるくんには自分が大事に思われているということが、ちょっと分かりづらかったのかもしれない。
まい:私たちから見ると、愛情を持って接してることがよくわかるお母さんですけどね。
かおり:この1件でお母さんも考えさせられたっておっしゃっていて。何かができたときにほめることももちろん大事だけど、1番大事なのは、「できてもできなくても、あなたの存在そのものが大切だよ」っていうメッセージを伝え続けることなのかなって。
なんか、独居老人と発達障害児と関わって、両方同じことだなって、思ったんだ。
まい:人間誰しも、「誰かに必要とされている、受け入れてもらっている」という実感が土台になって、可能性を最大に広げていけるのかもしれないですね。もちろん私たちも。
かおり:そうね。人と比べて何かができないとだめだ、って思い込んでしまう人って多いけど。人間、生きてるだけで十分なんだから。
まい:ううぅ...かおりさんに言われると、安心感がすごい……。私も落ち込んだら、かおりさんに「生きてるだけで十分」って言ってほしいです。
かおり:いつでも言いますよ(笑)
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