初めてナゴヤ球場に訪れた思い出|13年前、野球少年の自由研究
昨年(2022年)に少し話題になった自由研究があった。
「なぜ中日ドラゴンズは勝てないのか。」
思い返してみれば、自分の小学生の頃にも夏休みの自由研究にかこつけて、中日ドラゴンズの事を書いたことがあった。当時はまだドラゴンズは強いチームだった。
今の野球少年には信じられないかもしれないが。
そんな大層な研究ではない。選手名鑑を書き写したり実際に球場へ見に行った感想を書いたりしたのを覚えている。
この新聞記事を読んで、自由研究ノート(表紙はドアラ、シャオロン、パオロンのイラストだったはず)を探してみたが見つからなかった。
しかし、先日になって写真の元データが入ったSDカードが見つかった。せっかくなので、この日の記憶を思い出して書き残しておこうと思った。
愛知県の田舎にいた子供の僕にとって、例えば隣町の大きな本屋に自転車で行くことすら大冒険だった。まして名古屋は大都会、間近でプロ野球選手を見られる一度きりの貴重な機会だったのだ。
◇中日ドラゴンズ2軍のスタメン
当時、ベースボールヒーローズ(以下BBH)というカードゲームをやっていた。パワプロ、プロスピと同じKONAMIの野球ゲームだが、二軍の選手まで多数収録していたため、選手の名前はBBHで覚えた事が多かった。当時集めたカードは今でもほとんど残っている。
検索すると見に行った日のスタメン情報があった。選手を知らない方のためにカードの選手紹介文も一緒に載せておこう。
1(遊)谷 哲也
2(二)岩崎 恭平
3(左)中川 裕貴
4(三)新井 良太
5(一)福田 永将
6(中)藤井 淳志
7(右)セサル
8(捕)前田 章宏
9(投)川井 雄太
◇山井大介選手の思い出
ナゴヤドーム(現・バンテリンドーム)に行った時の写真。これはナゴヤ球場に行った後で、8月に観に行った。
この日の先発は山井大介投手。あわやノーヒットノーラン達成か、という素晴らしいピッチングだった。
当時は子供だったし、家に帰るのも名古屋から時間がかかるので試合の最後まで見届けることはできなかった。ラッキーセブンのパフォーマンス見て帰ったんだっけ?
家に帰ってから試合速報だったか、翌日のスポーツ紙だったかを見て、結局は坂本勇人選手に打たれて達成できなかったと知った。
◇松井雅人選手の思い出
当時、ブルペンで女性ファンたちの黄色い声援を受けていた選手がいた。
それが松井雅人選手だった。
女性ファンたちはおそらく自作であろう団扇を手に持っていた。松井選手はこの年がルーキーイヤーで、グッズも充実していなかったからだろうか。
ナゴヤ球場内野席はブルペンが目の前にあり、選手との距離が近い。これも球場の魅力の一つだと思うのだ。
◇新井良太選手の思い出
夏休みのナゴヤ球場は、内野席では少年野球のユニフォーム姿の野球少年たちが「~選手、がんばれ~」「~選手、サインくださ~い」と声をあげる姿が見られる。
僕が見に行った日、この前年に一軍でブレイクした選手がいた。守備練習につく際には「~選手、がんばれ~」と声がかけられた。しかし、その選手はそのまま顔も向けず守備についた。
残念がる野球少年たち。手を振るとか何かすればいいのに、と自分も子供ながら印象が悪く感じたのだった。(ドラゴンズファンの方々、申し訳ありません)
対して、試合前にネット越しに野球少年たちに対してサインしていたのが新井良太選手だった。
この日の新井選手は四番サードで出場したが、活躍を上げられなかった。ある打席に入る時、相手のタイガースファンからヤジが飛んだ。
「新井~、兄貴が泣いてるぞ~」
少年ファンに優しかった試合前の光景、兄と比較されてヤジを飛ばされながらも懸命な姿。なんとか報われてほしい。と、当時の子供時分に思った。
今は「推し」というスラングが流行っているが、「強く応援したい人」という意味合いであれば、自分にとっての「推し」は新井選手になった。
シーズンオフ、新井選手は兄のいる阪神タイガースにトレードで移籍していった。トレードというのは、相手チームから必要とされて選ばれたのであって、それは喜ぶべきことだ。
余談だが、トレード相手でタイガースから移籍してきた水田圭介選手。
初めてBBHを遊んで出たカードが水田選手だったので、これも何か縁を感じた。
その後、阪神タイガースでは新井選手は兄弟で一軍で活躍し、一時期は四番にもなった。テレビで活躍を見たとき、僕はあの日の事を思い出していた。
あのナゴヤ球場で「兄貴が泣いてるぞ~」とヤジを飛ばしたタイガースファンのオヤジを見返してやったのだと。
◇終わりに
僕はナゴヤドーム(現・バンテリンドーム)よりナゴヤ球場の雰囲気が好きだ。やはり子供の頃の思い出が強いからだ。流行り病の明けた後は、また見に行きたい。
僕はもう大人だけど、これからの子供たちに夢を与えられるような選手、チームであってほしいと思う。