東葛スポーツ『ドリームハウス』(でー)

初の東葛スポーツ。チケットはXの告知だけで発売日に即完。今一番小劇場界隈をざわつかせている劇団というのをどこかで目にして楽しみにしていた。

舞台には二階建ての家が建っている。芝居が始まると舞台下手のDJが音楽をかけ、俳優たちのラップが始まる。前評判でラップがすごいというのは聞いていたけど、本当だった。すごくかっこいい。音楽は詳しくないが、J-POPのダサい日本語ラップのイメージは全くない、日本語ラップの言語センスに圧倒される。俳優も上手い。ラップが上手い俳優を配しているのか、それとも稽古で上手くなるのか。

ラップパートのあとは、会話劇が始まる。舞台の家にはリカちゃん人形の家族が住んでいることがわかる。リカちゃんと、ママとパパ。どうやらリカちゃんは芸能活動をしていて、今度はアメリカのバービーの映画に本人役として出演するという。俳優たちはラップパートと同じく、黒のサングラスをかけてハンドマイクを持ちながら芝居をする。彼らは海外ドラマの吹き替えのような喋り方をするが、会話内容は平成初頭の葛飾区に住む核家族のそれで、地元の行事やお隣さんの噂話などもする。この辺のチグハグさが面白かった。しかし突然空気が変わり、不穏なラップとともに殺人鬼が現れ、両親が不在の間にリカちゃんの家に忍び込み、リカちゃんを滅多刺しにしてしまう。これはどうやら1966年に実際に起きた、2日後にアメリカ留学を控えていた女子大生が殺害された「柴又三丁目女子大生殺人放火事件」を元にしているということがわかる。

ここでかなり心を掴まれていたものの、その後俳優が「最近の東葛ってこんな感じなんだ」という台詞によってフィクショナルな世界は破壊され現実に戻ってくる。そこからは楽屋落ち的な会話と異化効果の演出が続いていく。恐らくこれがいつもの「東葛スポーツ」なのだろう。個人的には前半のフィクショナルな世界をもっと続けてほしかったのだが。別の作品も観てみたい。俳優はみんなラップ含めめちゃくちゃ良かった。

東葛スポーツ『ドリームハウス』
2024/10/4 (金) ~ 2024/10/9 (水)
シアター1010稽古場1(ミニシアター)

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