ピナ・バウシュ『春の祭典』他(でー)

ピナ・バウシュ版『春の祭典』。元の作品のことを全然知らなかったのだが、ピナ・バウシュ〈版〉というのは、ストラヴィンスキー作曲の『春の祭典』というバレエ楽曲には、さまざまな振付家の振り付けのバージョンがあるから。20世紀のはじめ「大地の神に生け贄を捧げる」という古代ロシアの風習をテーマに作られたこの楽曲は当時は前衛的すぎて大センセーショナルを引き起こしたとか。

今回のプロダクションは、ピナ・バウシュの振付・演出はそのままにアフリカの各国から選ばれたダンサーたちによる上演だった。ぶっちゃけ普段ダンスはそこまで観ないし、コンテンポラリーダンスとなるとさらによくわからんのだが、なんせピナ・バウシュ作品はそんな私でもすごいと思えるすごさがある。しかも演劇とダンスの間のような作品が多くて、物語としてわかるっていうのもある。作品全体としてもだが、振り付け一つ一つにもちゃんとドラマがあるように見える。そこがすごい。

といいつつ、ピナ・バウシュ振付を観たのは今回が2作目で、前回はロンドンのサドラーズウェルズ劇場で観たヴッパタール舞踊団(ピナ・バウシュの劇団)の「青髭」。今回アフリカ系ダンサーたちの踊りはわざと荒削りな生の感じを出していて、それが振り付け感を消すという意味ではよかった。特に最後の生け贄の踊り、赤ドレスのダンサーの鬼気迫るダンスはすごかった。一方で、やはりヴッパタール舞踊団の完成された振付(演技)のすごさには及ばなかったかもしれない。前回の感動は越えられなかった。振付が演劇的な分、その完成度が高ければ高いほど、ドラマチックになる。いや、完成度っていうと機械的な感じがするが、やはり演技のうまさってことなのかもしれない、ダンス的な演技、演技的なダンス、うーん、その辺の技術の違いについては考えればとても面白いように思う。

ピナ・バウシュ『春の祭典』、『PHILIPS 836 887 DSY』/ ジェルメーヌ・アコニー『オマージュ・トゥ・ジ・アンセスターズ』来日公演
2024年9月11日(水) ~ 2024年9月15日(日)
東京国際フォーラム ホールC
https://stage.parco.jp/program/pinabausch2024/

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