木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』(でー)

演出が杉原邦生、監修・補綴が木ノ下裕一で、2015年の再演の、さらに再演ということなので3回目なのかな。うーん、杉原演出のキノカブは前回の『勧進帳』がすごく評判良かったので(観てないが)、それなりに期待してたのだけど、結構良くなかった、というか、全然好きじゃなかったな。一番はキャラクターのステレオタイプさで、遊郭の女性の描写は歌舞伎の現代アップデートをしているキノカブ的にはかなり大事なところだと思うが、女性の容姿をからかったり馬鹿にしたりする意識が透けて見えてこれは…とかなりゲンナリした。女性だけじゃなく、それぞれのキャラクターが非常に表面的で、物語を進めるためのキャラ造形、あるいはその場の笑いをとるためのキャラ造形、に終始していた。あと笑いのツボも多分私は杉原さんとは全然気が合わないなと感じた。会場は結構笑い起きてたが。コロコロコミック的な分かりやすいお馬鹿キャラが、大きな声と大きな動きで笑いをとろうとするの、結構しんどいなと。いや、これは多分好みの問題なのだとと思うのだが…。

あと、お嬢吉三の「月は朧に白魚の」の名台詞は、やっぱり言ってほしい。歌舞伎がすごすぎて真正面からできないというもわかるのだが、音楽でっていうのは、どうしても逃げているように思ってしまった。歌舞伎のまんまやれということではなく、現代言葉に翻訳するでもいいと思うが、そこは俳優の見せ場なのだし、きちんと台詞として俳優に言って欲しかった。音楽も唐突で、その唐突さが効いてるわけでもなかった。後半のDJもよくわからんかった。

5時間20分あったが、結局黙阿弥が書いた筋の面白さだけが伝わり、これを現代でやることへの演出的テーマがどこにあるのかわからなかった。とにかく演出意図として「古典を5時間20分飽きさせずに観させられるのすごいでしょ!」ということ以上に、この作品で伝えたいことがあったのか、と、疑問に思ってしまう。

否定的な感想ばかり書いたが、役者陣はすごく良かった。特に須賀健太、ALWAYS三丁目の夕日のイメージしかなかったけど、舞台良かった。2.5次元の芝居とかも最近は出てるのか、ジャンプ漫画の主人公感のあるお坊吉三が、うまくハマってた。

木ノ下歌舞伎『三人吉三』
2024年9月15日 (日) ~9月29日 (日)
東京芸術劇場プレイハウス
https://kinoshita-kabuki.org/kichisa2024

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?