五倍子で染める、おじいさんとの約束

虫コブと呼ばれる五倍子がたくさんできました。
以前住んでいた古い家の隣のおじいさんと、この虫コブを山にとりに行く約束をしていました。
おじいさんは、小さくてかわいい人でした。
山には、虫コブという実が秋になる。
インクの材料やお歯黒にもなったそうです。

でも、昔は昔、今は今のやり方でやらなければ、駄目だ、というのが、おじいさんの口癖でした。
そういうお爺さんの家は、昔ながらのかまどでご飯を炊き、五右衛門風呂にはいって、囲炉裏に当たていました。

おじいさんは、ご飯と畑でとれた野菜という質素な食事をしていましたが、
山に五倍子をとりに行く前に、胃がんでなくなってしまいました。

私は、今山に住んで一人で五倍子をとっています。
毎年五倍子をとっていると、おじいさんのことを思い出します。

そして、
昔は昔、今は今のやり方でやらなければだめだ、
と言っていたおじいさんの言葉が重なります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?