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春野さんを語りたい

何か最近はぼーっと何をするでもなく考え事をしたり、日記を書いてみたりする時間が増えてきました。こんにちは、やとわです。

これを読んでくれているあなたには好きなアーティストがいるだろうか?語り出したら止まらなくなるようなひと。わたしにとって春野さんはまさにそんな人。
彼の曲をジャンル分けするならlofiかシティーポップかも。ローテンポで音数が少なく、優しい歌声が特徴。雨の日に部屋の電気を消してコーヒーを片手に聞きたくなる感じ。雰囲気が伝わっていたら嬉しい。

春野さんが2020年夏前に発表した「Kidding Me」のコメント欄に「片想いしている相手と遊んだ帰りに聞く曲」と呟いている人がいて秀逸だなと思った。そんな時間が幸せ、しかしあと一歩満たされていないような曖昧な感情に優しく寄り添ってくれているような感じ。冷えた心を毛布で包んでくれているような優しさを醸している。表現が難しい。彼がどこかのインタビューで、失恋の美しさを語っていた。儚さとかそういうものの美しさについては僕も大いに共感できる。小さいもの、すぐ消えてしまうもの、消えてしまいそうなもの。どれも美しい。というわけで、わたしが初めて知った恋の美しさは儚さだった。

何がそう思わせるのか。歌詞から感じさせる寂しさとは対照的に彼の声は優しく暖かいからだと思う。冷たさと暖かさの共存が絶妙な形を織りなしている。

彼の曲で注目すべきは歌詞。詩的で抽象的な表現が多いけど、日本語特有の含みを持たせている感じがまた奥ゆかしい。物事の核心には触れず、外側を撫でているような。
映画に絡んだ歌詞が多い。「Instant date」の一節には「君の好きな映画は 眩しいだけで何一つわからない フイルムノワール」というのがある。だれか好きな人を思って独り言を言っている場面が想像できる。その人のことはなんでも理解してあげたいと思って努力しても、どうしても理解できない部分がある、そんなもどかしさも感じる。
 また「ターミナルセンター」では冒頭「映画みたいな 謳い文句を 呪いのようにして いつからだろう エンドロールが 霞んで見えるのは」というのがある。タイトルの「ターミナルセンター」とは?ターミナル駅と言えば電車の終着駅。何かの終わりを暗示しているような印象を受ける。「エンドロールが霞んで見える」というのも、二人の恋の終わりが近いと悟って呟いたセリフに聞こえる。
 他にも「Drawl」では「エンドロールに名前を載せて 偽らないで 残しといて」というのがある。この歌詞には痺れた。エンドロールというのは知っての通り、映画の最後に出てくるその映画を作った監督やスタッフの名前がずらっと並んでいるもののことだ。歌詞の言葉を誰かに向けて発しているとしたら、それはその相手の人生を映画と捉えているようにも思えないか。その人の人生が終わろうとする時、もう一度自分の人生を振り返って思い出す数々の人と名前の中に、主演とはいかないまでも背景のセットを作ったスタッフの一人にでも覚えていてくれたらと思うそんな気持ち。それが痛いほど伝わってくる一節だと感じる。「ああこの人は誰かに自分の存在を覚えていて欲しいんだな」とわかるはず。お遠く先の好きな人に憧れる気持ち。こういう経験は実は共感できる人が多いと思う。

「美しいのは互いが互いを認識している恋愛だけでない。報われない叶わない恋もまた美しい」と表現できる彼がとてもかっこいい。

ただただかっこいい。

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