Angel
こんばんはやとわです。
新曲「Angel」を投稿しました!もう聞いてくれましたか?
沢山反応をいただけて、また自分の手の中から外の世界へ作品が羽ばたいていったんだなと実感しています。「Angel」は6月から作り始めていたので今までで一番巣立っていくまでに時間がかかりました。なんでなんだろう。作品の数を重ねるにつれて制作にかかる時間が長くなっていってますね。すごく顕著に。こだわりが多くなったのかな。
とにかく「Angel」に対して私が抱いている愛情もそれだけ大きくなりました。
ここで一つ私が好きな映画を紹介したいなと思います。
オーソンウェルズ監督の「市民ケーン」という作品です。
1941年の作品です。古いですね。たとえ完成から時間が経っていても、本当に魅力的なものの価値は落ちないものです。
主人公の男ケーンは新聞王の大金持ち。彼は死の間際、ベッドで「rose bud(バラの蕾)」という言葉を言い残して死にます。
「rose bud」 とは何か。大金のありかを示す暗号か、はたまた恋人へ向けたメッセージか。宝さがしをするように、新聞記者たちが取材を始めるところからこの物語は始まります。
「rose bud」の取材を進める記者たち。
しかし一向に「rose bud」の答えには辿りつきません。一方でケーンの古い知人たちに取材をするに従い、明らかになっていくケーンの人生。ケーンはどんな人物で、どのような生い立ちで、どのような失敗をして、どのように裕福な生活を手に入れたのか。
お金のない家に生まれた彼は、母に捨てられ金持ちの養子となります。逆境を乗り越え、努力し、新聞社で出世した彼は社長に。
地位と名声を手に入れた彼は街から離れた場所に豪邸を建てました。天井は高く、それを支える大理石の柱が聳え立つ居間。街を見渡せる眺めのいいバルコニー。晩年は恋人を家に呼び寄せ、有り余る広さの豪邸に2人で暮らすようになります。何もかもが揃った幸せな生活。
しかし彼女との関係は長くは続かず、彼女は家を出て行ってしまいます。そうして豪邸に一人残されたケーン。彼女がいた部屋をめちゃくちゃに壊してしまいます。部屋を出て壁を覆い尽くすほどの大きな鏡の前で俯いた彼の表情は、暗く、憔悴していました。地位も財産も手に入れた彼は晩年に全てを失い、70余年の人生は幕を閉じます。
「それにしてもrose budのことは何一つわからなかったな。」「ああ、しかしrose budには意味なんてなかったのかもしれない。」そう話すのは取材を終えた記者たち。住人を失った豪邸の玄関は今にも運び出されようとしている高価そうな彫像や骨董品の数々で埋め尽くされています。それはケーンが生前趣味で集めていたものでした。
ゾロゾロとその骨董品の木箱の山の間をすり抜け歩く記者たち。記者の一人が箱に詰められたパズルに目を止めます。
一人の女性記者が「rose budはパズルを解く鍵よね?」とパズルを眺める男記者に聞きます。「彼は何もかも手に入れそして失った。だがこれだけは得られなかった。人生をひとことで語ることは不可能なんだ。rose budはパズルの一片。欠けた部分だ。」
そう言うと記者はコートを着て「さあ出発しよう」と他の記者たちと共にケーンの豪邸を去って行きました。
高く高く引いていくカメラ。上から眺める骨董品の山はまるでニューヨークのビル街。進んでも進んでも続いているその山は永遠と続いていくよう。
その山の先、豪邸の奥では必要がなくなった家具を焼却炉に投げ入れているところでした。「さっさと片付けよう」一つの子供用のソリが投げ入れられました。みるみるうちにソリには火がついていきます。
徐々に寄っていくカメラ。そこにはバラの絵と「rose bud」の文字が。
それは幼き日、ケーンが養子に出される雪の日にケーンが母からもらって遊んでいたものでした。
彼の人生から欠けてしまった最後の一ピース「rose bud」。それは本人以外には到底知り得ない、理解されることのない思い出のカケラでした。
どんな場所で生まれ、どんな人生を送った人でも、人間は思い出のカケラでできていて、そのカケラは他人の目には価値のないものに映ってしまうということ。容赦なく燃やされるソリを見た時、そんな茫漠とした切なさが私を襲ってきました。
「Angel」は私の「rose bud」です。
大切なつぼみです。
今回も読んでくださりありがとうございました。次はいつになるかな。わからないけど気長に待っていただければ嬉しいです。
「Angel」をよろしく
またね
やとわ
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ps.映画のお話ししたので、最近好きでおすすめなアニメと映画並べときます
・サイバーパンク
・X
・悪魔のいけにえ
・フレンチディスパッチ
やとわ| Angel - hatsune miku → こちら
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