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第11話 最低
「どこから見てたんですか?」
恐る恐るそう質問する。
「あなたが、なにか、ブツブツ呟いて真っ赤になっていたところからだけど。」
どうやら、僕の告白台詞は聞かれていないようで、すこし安心した。
「ところで、自分の名前を告白の台詞に含めるのはどうかと思う。」
聞かれていた。顔がさらに熱くなった。
「忘れてください。」
「別にいいけど。」
どうでも良さそうに、そう言う椎堂さん。
「それで、話って?」
「そのことなんですが。」
そう言うと、僕は尾張さんに目配せする。
それまで、黙っていた尾張さんは意を決したように、
「その、本当にごめんなさい。悪気は本当に無かったの。あなたを傷つけてしまったこと、とても、後悔してるわ。」
そう、謝った。
それに対して、椎堂さんは、無言を貫いている。
「あの、椎堂さん?」
その間に耐えきれなかった僕は、椎堂さんの反応を伺う。
「なに?」
「いえ、せめて、何か反応をしていただきたいのですが。」
「?」
その反応は、今起こったことがまるで無かったかのようだった。
その反応を見た尾張さんは、
「そうよね、私なんて見たくもないわよね・・・・・・。」
と、泣きそうな顔をしながら呟いていた。
流石に、見てられなくなった僕は、椎堂さんに言う。
「あの、流石に無視は酷いんじゃないですか?」
「訳のわからないことを言わないでくれない?それで、尾張さんの話ってなんのことなの?」
「はあ?」
その発言を、聞いた尾張さんは、下を向いて唇を引き結ぶ。
「いや、聞いてたでしょ、尾張さんがあなたに謝ってたの!その発言は流石に看過できないですよ!最低です!」
ただ、腹が立った。それ故の発言だった。
しかし、それを聞いた椎堂さんは困惑したような表情で、
「あなた、何言ってるのよ?尾張さんって、尾張恋さんよね?尾張さんは先月。」
亡くなったじゃない。
それを聞いた尾張さんの表情は僕からは見えなかった。
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