第2話 スマホゲーは大体クソゲー
その昔、ゲームファンの間で人生と評されたゲームがあった。
なるほど確かに、言い得て妙で、その感動的なストーリー。生き生きとした魅力的なキャラクター。
それらのどれをとってもなしえなかったそのゲームは、まさに人生といっても相違ない仕上がりだった。
しかし逆に、人生をゲームとして捉えた場合、誰もが口を揃えてこう評するだろう。
「何このクソゲー。星一つですね。」
そもそもゲームの評価というものは、エンディングを迎えた後の感慨。そこにたどり着いたときにこそ初めて下されるべきである。
しかしながら、人生のエンディングを迎えたとき、人は既に息絶えている。
感慨などというものはそもそも抱くことが出来ないシステムになっている。
それだけでもクソゲーだといえるが、それのみならず、人生の絶頂期。
個々人によって、まったく違うであろうその瞬間が終了した後。
エンディングが訪れるまで数年長ければ数十年もかかる。
その間多くの場合、波もなく谷もなく平凡な、いわば、終わったゲームのレベル上げをしているような時間がプレイヤーを待っている。
これが、クソゲー以外のなんだというのか。
そして、そんなことを夢にも思わず人生を謳歌している少年少女達は、なんと愚かしいのか。
そして、どこまで幸せであるのか。
それに気づいてしまった一部の者達は、嫉妬と羨望の眼差しを向けながら。
吐き捨てるようにこういう。
「リア充爆発しろ。」
「あ?」
「何でもないです。」
ぼそりとつぶやいた。
恨み言が聞こえていたのかいないのか、こちらを一瞥したリア充の集団の蔑んだような視線に気圧されて、その視線から逃げるようにスマホの画面を見つめる。
「あ、クエスト来てるー。」
棒読みで呟いたその言葉は応えるものもなく、ただただ空虚にこだましていった。
「なにあれ、きも。」
そんなリア充達の鳴き声のような暴言も聞き飽き、いつものようにスマホを弄るフリをする。
画面では、既にやり尽くしたスマホゲームのクエストクリアの文字が虚しく並んでいた。
新しいクエストなど、ここ最近はめっきり更新されなくなった。
来るものといえば、新しいキャラクターを引かせるためのガチャが定期的に開かれる。
そんな末期なコンテンツにいつまでも見切りをつけられずに長々と無駄な時間を過ごしている。
別に、いつだって辞められる。ただきっかけがないだけだ。
終わらせるためのなにかが。
昔の楽しかった思い出にいつまでも縋り付くかのような、そんな感傷がどうにも嫌になり、スマホのスリープボタンを押す。
タイミングよく、予鈴がなり、今日も退屈な授業がはじまる。