外伝:ハロウィン
「今日はハロウィンらしいですよ?尾張さん!」
少年は、期待に目を輝かせながら少女の方を見る。
「それがどうかしたの?」
「どうかしたじゃないですよ!今日の主役は尾張さんみたいなものじゃないですか!」
少女は、嫌そうな顔をしながら、
「私が幽霊だからとか言わないでしょうね。」
「もともとハロウィンって、外国のお盆みたいなものらしいです!」
そうなの?と、相槌を打ちつつ、スマホを操作する少女。
「死んだ人が、世間から浮いてしまわないよう、みんな仮装して受け入れるんですって!」
「ふーん。それなら、私は仮装する必要性がないわね。」
少年は、しまった。というような顔をして頭を抱え始めた。
「どうする。このままでは、また、尾張さんが制服で良いじゃないとか、女子力のかけらも無いことを言い出してしまう。」
「聞こえてるわよ。制服の良さがわからない紀美丹君は、さっさと仮装しなさいよ。」
少年は、渋々ながら教室を出て行く。
「さて、私は、」
しばらく後、教室のドアが開かれる。
「「トリックオアトリート!」」
そこにいたのは、狼男の格好をした少年と、魔女の格好をした少女だった。
「尾張さん!?その猫耳は!?」
「猫耳?いいなぁ。」
そして、それを出迎えたのは、化け猫の格好の少女であった。
「なんで、椎堂さんと一緒に来るのよ。」
化け猫の少女は、頬を赤く染めながら、ポソリと呟く。
「そこであったんですよ。」
「今日ハロウィンだから、尾張さんに会わなきゃなぁと思って。私も見たい。」
あなたもなの。と尾張さんはボソッと呟く。
「そんなことよりトリックオアトリートですよ?お菓子をくれなきゃ悪戯しますよ?」
狼男と魔女は二人でほくそ笑みながらにじり寄ってくる。
「そもそも、トリックオアトリートって言うの私側じゃないの?」
まぁ、良いけど。と少女は後ろに回していた手を前に突き出す。
その手には二つのラッピングされたお菓子が握られていた。
「なんだと?尾張さんがお菓子を用意している!?」
「そんな!?」
「甘いわね。こんな事もあろうかと用意しておいたのよ。」
いったいどうやって。狼男は、顔を思案の色に染めていたが、しばらくして、考えるのをやめた。
「わーい尾張さんにお菓子もらったー!」
「ありがとう。」
どういたしまして、と少女は2人にお菓子を手渡す。
「じゃあ、次はこちらの番ね。」
「「?」」
「トリックオアトリート」
狼男と魔女は顔を見合わせて、何やら耳打ちしあうと、
「「悪戯で!」」
と、声を合わせる。
「なんでよ!?」
少年にのみ届く少女の叫びが部室党に響き渡った。
その後、旧文芸部室では、お菓子を三人で分け合うお化け達が目撃されたとかされなかったとか。
Happy Halloween!