第12話 幕間:初デート前半
夕暮れの教室で、少女がボソッと零した。
「明日、付き合ってくれない?」
「喜んで!」
「なにか、勘違いしてない?ちょっと買いたいものがあるから、付き合ってほしいだけよ?」
「喜んで・・・・・・。」
まあ、知ってたけどね。
翌日、学校とは違う彼女の私服に想像を膨らませつつ、時計塔の下で待っていると、彼女が、待ち合わせ時間ちょうどに来た。
「あら、存外、時間に正確なのね。」
そんな、何気ない言葉が気にならない程には、僕は衝撃を受けていた。
「・・・・・・尾張さんもね。」
やっとの事で搾り出した台詞は、つまらないおうむ返しで、しかし、それもいたしかたないと思う。
彼女は、何故か上下とも学校の制服であった。
「あの・・・・・・。」
「なにかしら?なにか文句でも?」
「いや、制服・・・・・・。」
「世界で一番美しい顔と肉体を持つものにとって最もその美を輝かせる服装は何だと思う?」
「少なくとも、尾張さんが今着てるものではない事は確かだと思います。」
返答を聞いてか、聞かずか、わからぬうちにすぐさま帰ってきた答は、
「全裸よ。」
「それは、服装じゃない。」
「最も、美しいものを隠してしまう服なんてものは、結局邪魔なだけなのよ。」
「だからって、その服装はどうなんですか?」
「服なんて、どれも同じよ。だったら、着心地が良いものを選ぶのが当たり前じゃない。」
「いや、まあ、そうかもしれませんけど、もう少し、お洒落に気をつけても良いんじゃ?」
「それは、ここで、全裸になれという事かしら?とんだ変態ね。」
「言ってないですよね!?」
周囲の視線が先ほどとはまた違った意味合いを持ち始めている気がする。
「そんなことより、行くわよ。」
そういうと彼女は、制服のまま、すたすたと先をいってしまうのだった。
まあ、良いけどね。別に、期待なんかしてなかったし。
「それで、今日はなにを買いに来たんですか?」
二人連れだって、歩きつつ、尾張さんに質問する。
その質問には答えず、尾張さんは話し出す。
「知ってる?来月、100年に一度って言われてる流星群がくるのよ?」
流星群?
「ハレー彗星しかり、流星と世界の終わりは切っても切り離せないわよね。」
「はあ、それでなにを買いに来たんですか?」
「テントよ。」
「テント?望遠鏡とかではなくて?」
「望遠鏡で流星群みてどうするのよ。どうせなら、流星群に近い場所で終わりを迎えたいじゃない?」
どうやら、流星群がきたら、世界が終わるということになっているらしい。
「まあ、世界は終わらないですけど、流星群は見てみたいですね。」
尾張さんは、前半を聞き流して、
「だから、山に行くのよ。」
と言った。