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第69話 クソゲー
気がつくと俺は黒い男の後ろを歩いていた。
「なぁ、なんかまた増えたんだけど。」
「見境なく殺すからでしょう。自業自得だわ。」
黒い男は、銀髪の女性と話している。
殺すって何か物騒な話してるな。しかし、なんで俺こんなところにいるんだっけ。
どうにも、記憶が曖昧でぼんやりしている。
それでもなんとなく男の後ろをついていく。何故かそうしなければいけない気がする。
さっきまで何をしていたっけ。男の背中を眺めながら考える。
確か、いつも通り退屈な授業受けて、スマホゲームの更新確認して、それから普通に家に帰ったようなーーーーーー
ーーーーーー違う。確かあいつの事を追いかけたはずだ。一度見失って、けどもう一度見つけたあいつを殺そうとしたはず。
かなり抵抗されて、怪我もした筈なのに傷が全くない。どういうことだ?
薄寒い想像をしてしまう。ありえない。俺が、そんなこと、ありえていいわけがない。
目の前の黒い男の肩を掴む。しかし手がすり抜ける。
は?
何度も試すが、その度に身体が透過してしまう。
「は、はは・・・・・・。」
渇いた笑いが口から溢れた。
生前、何気なく考えていた人生の終わりのその後。
そんな時間がまさか存在するなんて。思いもしなかった事実に、放心状態になる。
ボーッとしながら男は自らの人生を振り返る。
好きだったゲーム。振り向いてくれなかった好きだった人。嫌いだった奴。楽しくなかった学校。俺の全盛期っていつだったんだろ。
人生を振り返る機会が与えられたはいいものの、クソみたいな人生を振り返っても結局得られた感慨は、一つだけだった。
やっぱり人生ってクソゲーだわ。
渇いた笑いを溢しつつついてくる男を流し目で見つつ、黒い男は呟く。
「なにあれ、怖っ。」
「貴方ほどじゃないと思うわよ。」
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