第9話 幕間:金目鯛
「金目鯛が赤いのは天敵から隠れやすくなるかららしいですよ?」
少年が、なにやらスマホを操作しながら、呟く。
「どういうこと?」
少女は、文庫本のページをめくりながら、何の気なしに相槌を打つ。
「赤色は深海だと光が届かないから黒く見えるらしいです。」
少女は、文庫本に栞を挟むと、
「それはどうかしら。」
と、少年の言葉に意を唱える。
「?」
「金目鯛の稚魚はもとから赤かったのかしら?」
「どういうことですか?」
少女は、薄い胸を張ると、語りだす。
「海老で鯛を釣るっていう諺があるけれど、鯛は、海老を食べるらしいわね。」
「はぁ。」
「そして、海老の殻には赤い色素が含まれている。」
「つまり?」
「鯛は海老を食べるから赤いのよ!だから、正確には海老が赤いのが天敵から隠れやすくなるためであり、それを食べる鯛がその効果を引き継いでいるって言うべきね。」
少女は一息でそう言うと、フフンとその小さな鼻を鳴らす。
「なるほどなー(棒)」
それに対する少年の反応は、いささか芳しくないようで、
「なんだか、馬鹿にされている気がするわ。」
少女は、不満そうな顔で少年の横顔をみる。
「そんなことないよー(棒)」
そんな、白々しい台詞を吐きながら、少年の顔は、先程からスマホから上がっていない。
夕陽が、そんな二人に影を落としていた。
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