君が見る世界、僕が見る君 #04
三島雅(みしまみやび)と林道麗美(りんどうれみ)
チャイムが鳴り、昼休みになった。
いつもは志麻場と学食に行くのだが、学校案内を命じられた身としては、ご飯を食べるついでに、学食を案内した方が効率がいい。
「昼飯とかってどうするか決まってる?」
「え、いや、あの、何も決まってなくて」
「うむ、じゃあ一緒に学食だな」
志麻場ナイス、アシスト。
そう言えば、意外にも女子が話しかけにこない、ちなみに男子はみんな遠巻きに観ているだけ。現実とかけ離れた容姿を持ってるが故、声をかけるのは恐れ多い、とか思ってるのだろうか。
そして忘れてはいけない、廊下に集まる他クラスの群勢だ、野次馬が過ぎる程に集まっており、そもそも教室を出れるかも怪しい。
「志麻場、出れると思うか」
「こう言う時、普通は男子が道を作るのが定番だが、俺はいつももう1つの可能性を考えている、ティターニアさん頼んだ」
「わ、私ですか」
「君が、一言「通してください」と言えば、モーゼの十戒のごとく道は開かれる」
確かに、ここに来てる野次馬はティターニアさんを観に来てる、ならば本人の命令なら従う気がする。
「ティターニアさん、できる?」
「や、やってみます」
一瞬顔を上げて、こちらを見て、ちっちゃくグーを握る。
流石にかわいいと思ってしまった。
この学校の学食は食券を買ってから、ざっくり分類された列に並ぶ方式だ。僕と志麻場は、いつも大体カレーを選ぶ、1番安いからな。
ティターニアさんはというと、悩んでいたようだがミニカレーだ。ということで同じ列に並んだわけだが、気にして無いつもりが、どうしても気になる。学食中の視線がこっちを向いている。
「悩んでたようだけど、日本語読めなかったりした?」
「いいえ、、、そう言うわけでは、、、」
小さく首を振って、相変わらず斜め下を向いて話しているが、騒がしい場所なので、少し声のボリュームを上げてくれている。
「文字は読めるのですが、どんな料理なのか分からないものもあって、、、」
「そういうこと、じゃあ色々食べてみると良いよ、僕は大体全部食べたけど、コレと言って不味いとかなかったと思う。志麻場はどう?」
「俺も特に無かったかな、強いて言えばマグロ以外の海鮮系は個人的に食べれないから、それ以外って注釈付きだがな」
「お前もう高校生だろ、せめてマグロ以外の魚介も食べてみろって」
「ふ、断固拒否する」ドヤ顔でメガネを直す。
「ふふ、」小さく笑い声が聞こえた。
声のする方を見ると目が合った。そして、ふと、考える。ティターニアさんは、好き嫌いとか有るのだろうか、想像がつかない。野菜嫌いとかだろうか。
「またまた、不正解」
「食券出してー」食堂のおばちゃんが切り裂く様に声をかけてくる。
無事受け取ると、ティターニアさんが訪ねてきた。
「席は取らなくて良かったんですか」
「大丈夫大丈夫、多分もう来てるから」
この食堂は2階建で、1階は長机が幾つか繋がったやつが3列、その周りに無造作に丸椅子が並べられて、好きに使って良いことになっている。2階には丸机が5台、そして何故か色んな種類の椅子が置かれており、これまた好きに使ってる。
説明をしながら、僕達は2階に上がる。すると、2人の女子生徒が手を振っている。
「こっちこっちー」
「やっぱりか、早いな」
「いやあんた達が遅いだけ。て、だれー!その美少女!え、今これ現実?ちょっと隣きて来て」
「おう、じゃあ隣失礼」
「あんたじゃ無い!」
僕はカレーを置いた瞬間に、突き飛ばされた。漫画だとこういう時に頭から被るが、そんなこと現実では起きない。
「嘉島、体幹を鍛えた方がいいぞ」
「わざとだから、そんなに弱いわけないだろ」
3人が席に着く。
「そんな事はいいの。転校生ちゃん名前教えて!」
「あ、はい、恵莉・ティターニアです。スコットランドと日本のミックスです」
「ミックスってことは、ティターニア恵莉って事?」
ティターニアさんが頷く
「じゃあ、ティターニアさん、でいいのかな。でも、距離ある感じだし、恵莉ちゃんでいい?」
ティターニアさんは、更に頷く
「わたしは、三島雅。ヒメの幼馴染よろしくね!」
「「ひめ」って、、、」首を傾げる。
既に食べ始めてた僕は、少し咽せる。
「そう言えば、僕達まだ自己紹介してなかったな。僕が嘉島緋ノ匁で、こっちが」
「志麻場総司だ。ヒメは、嘉島の下の名前の「ひのめ」から取ってる。三島しか呼んでないがな」
「そして、この子が、林道麗美。林道家っていう剣道一家の子で、お爺ちゃんが師範なんだよね」
「正確には父が八段で、お爺ちゃんが範士八段。父がうちで道場を開いてて、お爺ちゃんが顧問兼公式審判員をしてる」
林道は相変わらず細かい、だがこの細かい性格と真面目に何度も救われた。
「恵莉ちゃんごめんね〜麗美は細かい性格なの許してね」
三島のテンションと2人の掛け合いに、必死でついていこうとするティターニアさん、小動物みたいになってる。
「それはそうと、可愛すぎじゃない。顔は勿論、その銀髪、発光してない?」
「いえいえ、、そんな事。発光なんて、、しないですよ」
こういう時、女子同士だと可愛いとか、顔や髪触ってる光景を見てると、男としては内心いいなと思ってしまう。うんキモイな。
「三島、そろそろ離してやれ、まだティターニアさん、ご飯食べてないだろ」
「あ、ごめんなさい。て、カレーにしたの?あんた達、説明がめんどくさかったからって、勝手に同じやつにしたんでしょ!」
「いやいや、それは冤罪だ!僕たちは何も手出ししてない。だろ志麻場」
「ああ、確かにティターニアさんは自分で選んだ。ただし、意味が分からなかったメニューが合ったことも事実」
「おま、それ言うなよ!」
「ほらやっぱり〜、ちゃんと説明しないとダメでしょ!ねえ、恵莉ちゃん」
「いいんです、これから、色々選んでみるので」
「こんな奴に、気なんて使わなくて良いんだからね。じゃあ、食後のプリンあげる。購買で売ってる中で一番美味しいから。個人的にね。ってことでヒメ!購買でもう一個買ってきて」
「はーー、めんどい、なんで僕が行かないといけないんだよ、自分で行けよ」
嘉島と三島の掛け合いはいつものことだ、俺と林道は特にツッコむこと無いが、ティターニアさんは違うみたいだ。なんだか少し寂しいような。
「そうか、そうゆうことか」