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僕が見た世界、君が居る未来 #08【小説】
恵莉の心2
扉を叩く音がした。
「はい」
「ティターニアさん、もうすぐ朝会なので、一緒に来てもらえますか」
私は頷いて、部屋を出る。
剣崎先生に着いて行って教室に向かう。教室に近づくと先生から
「まず、外で待ってて、声かけるんで、入ってきてもらう感じでお願いします」
私は頷いた。同時に胸の高鳴りを感じる。あの時の彼はいるだろうか。もし、いても表情には出さない、彼が覚えているかどうか確かめる必要があるから。
「じゃあここで、待っててください」
先生は先に教室に入る。生徒の話が聞こえる。転校生の噂は朝の運動をしていた人から広まったのだろう。
・・・
「入ってきていいぞ」先生の声が聞こえた。
それに合わせて、静まり返った教室の扉を開き歩き出す。
上履きが床を踏み締める音、教壇に上がると足音に合わせて、空洞と思える低い音、自分の息遣いまで鮮明に聞こえる。
私はついさっきまで聞こえていた喧騒から一転、静寂に包まれた空間に驚いた。まさか教室を間違えたなんて事は無いと思うが、心配になり生徒のいる方を少し見る。
『夢で観たあの人だ』
1人の生徒と目が合ってしまった。驚いてつい目を背けてしまった。
そして何より、今ので気づいてしまった。
〈いたーーー!きゃー!どうしよーー!ヤバすぎるーーー!〉
私は喜びのあまり出てしまいそうになる、心の声を抑えて、普通を装い教卓の横まで歩みを進める。
先生の指示で黒板に名前を書き、前を向く、誰とも目を合わせない様、少し伏し目がちになる。
「初めまして、今日から転校してきました。恵莉・ティターニアです。よろしくお願いします」
一瞬の静寂の後、阿鼻叫喚の嵐で教室が包まれる。先生は宥めるのに時間を要していた。
落ち着きを取り戻した頃、先生から改めて紹介と補足説明がされた。
「ってことで、席はーー、嘉島の隣が空いてるな」
「え、まじか、そうだった」彼の名前を初めて知った。
先生の指示で彼の隣の席へ向かう。皆んなと目を合わせない様、視線を少し下のまま席へ向かうが、つい気になって彼の方へ視線を送ってしまった。
『なぜずっと伏せ目がちなのか。ただ恥ずかしい、シャイなだけなのか』
すかさず目線を外す。席に座ると、先生から彼へ私に教科書を見せる様に指示が飛ぶ。机を近づけて教科書を真ん中に置き、彼が座り直す。
「ありがとう」そして「どちらも不正解」
私は頭に響いた声に答えてしまった。彼は気付くだろうか、いや気付くはずがない。私だけに聴こえるこの声に。