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君が見る世界、僕が見る君 #07

恵莉の心1

「涼し〜」
 冷房に扇風機、同時に使うのは、日本の贅沢の1つだとネットか何かで見た事がある。
 母国のスコットランドでは夏に相当する季節は無いので、基本は暖房か何もしないで過ごせる。
 朝ご飯を食べて、母と早めに学校へ行く。前々から転校の手続きをしていてで、登校初日の朝早めに来て欲しいと言われていた。
「日本の学校って楽しみね」
「うん、そうだね」
 日本の学校がどんな所か楽しみなのは勿論だが、私にはもう1つ楽しみというか、目的があった。
 あの時の彼にもう一度会う事。でもその先がまだ分からない、自分がどうしたいのかハッキリしない。でも、会ったら何かがハッキリすると思ってここまで来た。
 学校に着くと、この学校の生徒だろうか、校庭で運動している様子が見えた。
 校舎に入り周りを見回していると、白衣を着ている女性に声をかけられた。
「あのー、誰かお探しですか?」
 母が答える。
「!、はい、えーと、剣崎先生はどちらに居ますか?」
「剣崎先生ですか、職員室にいると思いますよ。場所分かりますか?」
「ごめんなさい、分からなくて」
「大丈夫ですよ、後ろの生徒さんは転校生ですね。そしてお母様、案内しますね、こちらです」
「お願いします」
 白衣の女性と一緒に職員室に向かう。

「着きました、ここが職員室になります」
扉の上の札を指して止まる。扉を開けて室内を確認して、剣崎先生の名前を呼ぶ。
「すいません、星奈先生。案内ありがとうございました」
 白衣の女性は星奈先生と言うらしい。
「こちらは星奈先生、保健室に駐在する先生です」
「よろしくお願いします」星奈先生が会釈する。
「こちらこそ、娘がお世話になります」
 星奈先生は私たちを剣崎先生に引き継ぎ、どこかへ行ってしまった。
「それでは、こちらへどうぞ。作成する書類や、説明等あるので」
私たちは剣崎先生の案内で隣の部屋へ行った。
「準備しますので、こちらで座ってお待ちください」
そう言って、職員室に戻って行った。

少しして、扉を開く音が聞こえ、先生が入ってきた。
「いやー、日本の夏は暑いでしょ。少し調べたんですよ、スコットランドは夏がないんですよね」
「いえいえ、日本ほどではないですが、最近は少しあったかい日もありますよ」
「へー、そうなんですね、やっぱり温暖化ですかね」
 先生は世間話をしながら、幾つか書類を分けて私たちの前に置く。
「転校に際して、色々書類を作成しないといけなくてですね。親御さんには、この書類とこの書類に目を通して、サインとハンコお願いします。で、エリさんにはこの学校のパンフレットと、名前ですね。学校に登録するので間違いないか確認お願いします。それと教科書類に関して2年生の後期からと言うことで、購入いただかないといけないので、確認してもらって、お支払いいただくことになります」
 先生の流れるような説明を聞きながら、母は難しい書類を見て考えている。
「すいません、先生。母は日本語の話す聞くはできるんですけど、文字はあまり得意ではなくて、一度持ち帰って父に確認してから提出でもいいですか?」
「すいません、そうでしたか。数日中であれば大丈夫です。普通に会話できているので、気を遣えず申し訳ない。ちなみにエリさんは読み書きの方は」
「娘は読み書きも出来ますので、難しい言葉でなければ、学校生活に影響はないと思います」
私は頷く。
「分かりました。では、お母様に渡した書類は持ち帰ってもらって、恵莉さんから受け取るという事で、お願いします」
「はい、分かりました」
 少しの間、母と学費とかの難しい話をした後、私はクラスの朝会で挨拶する事になり、それまでこの部屋で待つ事になった。

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