編集者という商売
編集者という仕事は、こすい商売だ。
書き手が一生懸命に仕上げた文章を、ああだこうだと批判したり、こねくりまわしたりできる。
言われるほうはお金をもらう立場だ。編集者は、お客様だ。
だから、「なるほど」とか「たしかに」とか言いながら、ときには的はずれな指摘も対応しなくちゃならない。
ぼくが見てきた現場には、そういう危険性が潜んでいた。偉そうに言っているぼくだって、書き手からそう思われていたかもしれない。
だから、書いてくれる人とは対等でいたいと思っている。
自分で文章を書いて、見てもらう経験をして感じたのは、相手を信頼できるかどうかが本当に大事ということだ。
信頼できない人の言うことは聞く耳を持てないし、そんなに気に入らないなら自分でやりなよと思うことだってある。
ぼくは、好き嫌いで批判されるのが一番嫌なんだろう。
でも、見てもらってよかったと思う編集者もたくさんいる。
修正を入れる場所が的確で、自分でも気づけてなかった間違いを直されたとき、救われた気分になる。次からは気をつけますと、背筋が伸びる気持ちになる。
文章を読んだ感想を、率直に伝えてくれる編集者も好きだ。そのうえで、どこを直したらもっと良くなるか、具体的に伝えてくれると信じることができる。
あと、一緒に作った記事が、多くの人に読んでもらえた、好感触だったときに「よかった!」と自分ごとのようによろこんでくれる人も好きだ。
文章には、人生が出る。
一生懸命に書いた文章は、自分の子供のように大事な存在だ。
だから、預ける編集者がこすい人か、信頼できる人かは、書き手にとって人生の分岐点だ。
素晴らしい書き手ほど、「違う」と思われた瞬間に去っていく。
だからといって、無理に背伸びする必要もないのだけど、ぼくは自分がされてうれしかったことを編集者としてやっていきたいなと思う。
自分の子供のように真剣に、そして、良いところは素直にほめたい。
だから、ほめる編集者なんて言ってるのかもね。
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