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手作りと大量生産のコンテンツは何が違うのか

「これって、同じ内容を並べ替えただけですよね」

数年前、検索流入を集める目的でSEOコンテンツを大量につくっていたときに、何度か言われた言葉だ。

正直に言うと、当時は「それで成果があがるならいいじゃないか」と思っていた。費用対効果で考えると、キーワードで検索結果の上位に表示されるコンテンツを大量生産することが、サイトに人を集めるにはコスパのいい戦術だったからだ。

知らない人のために説明すると、SEOコンテンツでは検索上位に表示される競合コンテンツの内容を並べ替え、表現を変え、言い換えて文章にする。極端な言い方をすると、「パクる」のと同じことだ。

それが悪いとは言わないけど、今はもうやりたくない。同じような依頼をされたとしたら、何かしら工夫をするだろう。

なぜなら、単純に「並べ替えただけ」の文章は、読めばわかってしまう。1回だけなら大丈夫でも、何度も読んでいれば「あ、この人は…」「あ、このサイトは…」と気づいてしまう。

それは、決して「コスパがいい」とは言えないと思うのだ。


自分の中に、「書きたいこと」「伝えたいこと」がある文章は、手作りのお弁当のようだ。
同じおにぎりでも、なぜか手作りで握ったおにぎりはおいしい。

新卒で働いていた札幌の出版社に、夕方になると現れる「おにぎりおじさん」がいた。名前はたしか、大山さん。もう15年前の話だ。

昔の駅弁売りが持っていたような、両手で抱える大きさの平ぺったい箱に、握りたてのおにぎりを20個30個と並べて売りに来る。値段は当時のコンビニにあるおにぎりより少しお高めだったけど、とにかくおいしかった。

まだ温かいご飯に、しなっとした海苔と、焼鮭やらタラコやら味わい豊かな具材ががぎゅっと握られている、何の変哲もないおにぎりだ。でも、食べると不思議なことに元気が出た。とくに締め切り前、「チーズおかか」には何度も救われた。

コスパのいい「コンテンツ」は、大量生産されるお弁当やおにぎりと一緒で、記憶に残ることはない。

手軽に買えて、お腹を満たしてくれて、しかも値段のわりに種類豊富でおいしいから、ぼくは何度もお世話になっている。悪く言うつもりはない。

でも、大山さんのおにぎりのように、思い出すことはない。

コスパのいいコンテンツは、数字を稼いでくれるだろう。
ただ、そのお客さんがコンテンツや商品のことを覚えててくれることは、たぶんないんだろうなと思う。

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