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夕暮れ時、風をきる音。 息が白い。 「またやってる。」 呆れたような声。 少年がバットを振っている。 「ご飯できてるからね。」 疲れた顔の若い母親。 意図せず彼女は侮蔑的視線を向ける。 「うん。」 少年はバットを振っている。 彼女は舌打ちをした。 「才能がない。」 コーチから言われた。 「自分に合ったものが他にあると思うぞ。」 監督に言われた。 (わかっている。) 気持ちがいいんだ。 野球が。 理由はわからない。