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ある村で化物が話題になっていた。 闇夜に紛れ、神社へ向かう山道の石段を登るという。 「食われちまうぞ。近づかない方がいい。」 噂はあっという間に広がる。 ある日、諸用で遅くなった村人がその場所を足早に通り過ぎようとする。近道だった。 「こわやこわや」 何かに気づき足を止める。 硬いものが石を叩く音だ。 音は次第に大きくなる。 コツ、コツ、コツ。 全身が硬直する。 大きな闇が石段を登って来た。 恐怖に顔を歪め村人は息を殺す。 闇は登りかけたが足を止める