「CVN-72」フーシ派による米空母攻撃の嘘
2024年11月、イエメンのフーシ派が米国の空母「CVN-72 エイブラハム・リンカーン」を攻撃したとするポストが、X(旧Twitter)上で様々な映像や画像と共に拡散されました。
しかし、拡散された情報の中には過去の情報や、空母とは関係のない映像が含まれていたため、FactCheckし、根拠と共に羅列する。
更新歴
2024年11月23日20時 【追記】「■空母エイブラハム・リンカーンの位置」11月23日現在
2024年11月21日17時 【追記】「■空母エイブラハム・リンカーンの位置」11月21日現在
■拡散された情報
[1]「イエメンからの巡航ミサイル攻撃を受けている」とする映像
判定:ゲーム内のシミュレーション映像
この映像は2024年1月にYouTubeに投稿された、ビデオゲーム「Arma3」を用いたシミュレーション映像である。
Arma3は素晴らしいゲームであるが、光の反射等あくまでもシミュレーション映像であり、現在米国海軍が運用していない艦影もあることから、比較的判断しやすい。
[2]「イラン、イエメンに攻撃された米空母」とする映像
判定:強襲揚陸艦の火災事故映像
この映像は、2020年7月12日に米国カリフォルニア州のサンディエゴ海軍基地において、火災事故をおこしているワスプ級強襲揚陸艦「LHD-6 ボノム・リシャール」を映したものである。
映像中、艦橋に「6」のハルナンバーが書かれていること、艦形がニミッツ級空母ではないこと、LHD-6 ボノム・リシャールが2021年4月15日をもって退役し、解体処分されていることと合わせて判断できる。
米海軍船舶登録簿:https://www.nvr.navy.mil/nvr/getHull.htm?shipId=2395
[3]「紅海で米空母をミサイルとドローンで攻撃した」とする映像
判定:ドイツ海軍フリゲートの映像
この映像は、2018年6月21日にドイツ海軍がノルウェー沖で演習を行った際、艦対空ミサイルSM-2BlockⅢAの発射に失敗したザクセン級フリゲート「F219 ザクセン」を映したものである。
空母の艦形ではないこと、ニミッツ級空母がVLS(垂直発射装置)を搭載していないことから、判断できる。
[4]「空母リンカーンが多数ミサイルを被弾した」とする画像
判定:過去の合同訓練時の画像
この画像は、2022年4月12日、日本海で行われた日米合同訓練において撮影されたものである。
画像上、黒くなっている部分は搭載機の発着艦のよるものであり、被弾による損傷ではない。
https://www.mod.go.jp/msdf/sf/english/news/2022/04/0419.html
[5]「米空母がイエメンのミサイルと無人機の標的になった」とする画像
判定:別空母の火災事故画像
この画像は、1967年7月29日にトンキン湾において、火災事故をおこしているフォレスタル級航空母艦「CVA-59 フォレスタル」を写したものである。
現在米海軍が運用していない艦載機が写っており、ニミッツ級と異なる艦形から判断できる。
[6]「アラビア海で空母を巡航ミサイルとドローンにより攻撃した」とする映像
判定:フーシ派によるタンカーへの攻撃映像
この映像は、2024年8月にフーシ派が攻撃したギリシャ船籍の石油タンカー「MT ス二オン」を映したものである。
艦形が空母とは異なるほか、フーシ派が公開した映像であるため、判断しやすい。
■空母エイブラハム・リンカーンの状態
11月14日 洋上給油
上記のとおり、様々な偽情報が流れたCVN-72 エイブラハム・リンカーンだが、実際は11月14日に、悠々と洋上給油を受けている様子が撮影されている。
11月18日 エイブラハム・リンカーンの位置
また、エイブラハム・リンカーンは、11月18日時点で中東地域を離れインド洋に位置しており、この移動に対し、X上では「フーシ派による攻撃を受けた後、撤退させた」とするポストが流れた。
しかし、11月1日の時点で米国防総省は、まもなくエイブラハム・リンカーンが中東地域を離れると声明を出しており、今回の移動は既定路線であったと考えられる。
https://news.usni.org/2024/11/18/usni-news-fleet-and-marine-tracker-nov-18-2024
11月1日 米国防総省による声明
11月4日 USNI Newsによる報道
11月23日 マレーシア到着
今後、新たな情報が拡散された場合、順次掲載する...