特別定額給付金(現金10万円)を世帯主に給付する点の問題点まとめ
こんにちは、スマート法律相談の弁護士のカツベです。
「特別定額給付金を親が独り占めしまう」「子供から渡せと言われているが渡さないといけないのか」などの質問がスマート法律相談に寄せられています。
弁護士ドットコムでも何回か取り上げられています。
今回は今まで頂いた質問と答えをQA形式でまとめたいと思います。
Q)給付金は世帯主のもの?それとも各人に権利があるの?
A)「給付を実施した総務省に確認しないと分からない」というのが正確な答えになると思います。
国が、「給付作業の便宜のため世帯主に一括で振り込んだだけで、本来は給付対象者となる個人に渡さないといけない」との見解に基づいて給付したのであれば、世帯主が子供や配偶者等の給付金を勝手に使うことは許されないでしょう。
そうではなく、「世帯主に世帯全体の給付金の処分権があり、世帯構成員に渡す必要はない」という見解であれば、世帯主が全額使っても違法ではないでしょう。
ここからは私の個人的意見ですが、給付を受ける権利は給付対象者である各人にあると考えた方が色々つじつまがあう説明ができると考えています。
基本的な考え方は4月30日に書いた記事の通りで、配偶者の暴力で住民票を移せない方が給付金を受け取る手続きが用意されていることを考えると、給付金を受け取る権利は各人にあると考える方が自然です。
また、養護施設児童への給付金は親にではなく施設若しくは世帯を離れている子供に給付されていますが、子供に権利がなければこういう扱いはされないはずです。
親は民法上子に対する扶養義務があり、家計の計算も同一ですが、同一世帯に入れるのは親族ばかりではありません。
例えば友人や住み込みの使用人など、親族関係にない者も世帯に入ることができます(非親族世帯)。
こういう場合も世帯主になっているだけですべての給付金を受け取って使うことが許されると考えるのは違和感を感じます。
Q)仮に給付対象者各人に権利があるとしたら、世帯主が給付金全額を勝手に使うのは犯罪か?
A)親族の場合、刑法244条により、窃盗罪等について免除されたり、親告罪になったりします。
しかし、非親族世帯で、同一世帯だが全く親族関係にない者の給付金を盗んだり横領したりした場合についてはよく分かりません。
その場合、給付金の処分権は誰にあるのかという前の論点の結論によって考え方が変わってくると思います。
Q)親が給付金を渡さない。訴えられるか?
A)できるかできないかと言われれば訴えることはできますが、民事訴訟の請求をする場合、主張立証責任は基本的に原告にあります。上記の論点を全てクリアし、訴訟で請求を認めさせるための主張立証をすることはかなり困難であると思います。
弁護士に依頼するとすれば、給付金以上の着手金・報酬が必要となる可能性が高く、また、権利の問題とは別に親権者の財産管理権の問題もあるので、見通しを考えるととてもお勧めはできません。
仮に自分が依頼の相談をされたとしたら上記のように答えると思いますが、人によっても考え方は違ってくると思います。
Q)夫と別居中だが住所は変えていないため、夫に給付金が入ってくる。取り返せるか?
A)基本的に一つ前の回答と同様ですが、配偶者の暴力等で住所を移せないのであれば、下記の手続きが使えるか確認してみてください。
配偶者やその他親族からの暴力等を理由に避難している方の申出の手続き
https://kyufukin.soumu.go.jp/doc/32_document.pdf?ver=20200512.01
また、夫から生活費等を受け取っていない場合、婚姻費用の分担請求をすることができるので、例えば調停の中で給付金を渡すよう交渉してみるという方法はあると思います。
(この給付が所得になるのか、配偶者に渡すべきものかという論点は当然あるとは思いますが)
別居の理由は様々なので婚姻費用等の請求についてはなんとも言えませんが、興味がある場合はどのような請求ができるかにつき一度弁護士と相談されてみてはいかがでしょうか?
Q)弁護士を依頼する費用がありません。
A)法テラスで無料法律相談ができる可能性がありますので、ご確認されてみてはいかがでしょうか。
Q)子供にも権利があるという考え方がどう考えてもおかしいと思うが、生活費を全て親に頼っておいて、給付金だけもらうというのは許されないのではないか?
A)給付金が誰にあるのかという問題点と、扶養義務者の義務の履行の問題は別の問題です。
特別定額給付金の給付目的は、「家計の支援」ですから、子供が目的外利用をしてしまいそうということであればそれを教え諭したり、親権者の財産管理権を行使して預かっておく、などのことはしてもよいとは思います。
しかし、給付金を渡す渡さないの問題で、親権者の扶養義務に影響したり、扶養義務を放棄できるということもありません。
参考記事
他のウェブサイトで参考になりそうな記事のリンクです。
まとめ
色々な疑問があるとは思いますが、前例がないため法律的な観点から確定的なことはあまり申し上げられない部分も多くあります。
基本的には法的な請求というより、世帯内で話し合うというのが現実的な解決法となるのではないかと思います。
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