敷金問題 カーペットの価値は6年で1円にまで償却 賃借人の負担割合は?
こんにちは、スマート法律相談の弁護士のカツベです。
【質問】
入居していた部屋を退去するとき、壁紙の一部が破けてしまいました。
そこ以外はきれいに使っていたつもりです(入居期間は5年)。
それなのに、壁紙を全部張り替えないといけないということで、敷金から5万円を修繕費として引かれてしまいました。
これは争うことができますか?
借主が退去時に負担しなければいけない費用(原状回復費用)は、「通常の使用の結果とは認められない傷や損傷」を元通りにするための費用です。
退去時にクリーニングを入れたり、鍵を交換するというのは、通常の使用をしていても発生する費用ですから、原則として借主に負担させることはできません。
(契約書にクリーニング費や鍵交換費を借主が負担するという条項があり、合意が成立している場合は別です。)
どこまでが通常の使用かについては、国土交通省が出しているガイドラインに詳しい説明があります。
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)
https://www.mlit.go.jp/common/001016469.pdf
壁紙交換は損傷した部分のみ
損傷が壁紙の一部だけであれば、基本的にはその損傷した面の交換だけで、それ以外の部分の壁紙交換は原状回復ではなくアップグレードになります。
損傷していない部分の壁紙交換費まで借主に負担させるのは過剰な請求の可能性があります。
長く住んでいると減価償却が生じる
長く住んでいるということは、壁紙も古くなっているということです。
国土交通省のガイドラインによると、壁紙やクロスは6年で耐用年数を迎え、価値は1円になるように計算することが可能です。
そこで、賃借人の負担については、建物や設備等の経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割合を減少させることとするのが適当である。
経過年数による減価割合については、従前より「法人税法」(昭和40年3月31日法律第34号)及び「法人税法施行令」(昭和40年3月31日政令第97号)における減価償却資産の考え方を採用するとともに、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和40年3月31日大蔵省令第15号) における経過年数による減価割合を参考にして、償却年数経過後の残存価値は10%となるようにして賃借人の負担を決定してきた。しかしながら、平成19年の税制改正によって残存価値が廃止され、耐用年数経過時に残存簿価1円まで償却できるようになったことを踏まえ、例えば、カーペットの場合、償却年数は、6年で残存価値1円となるような直線(または曲線)を描いて経過年数により賃借人の負担を決定する。よって、年数が経つほど賃借人の負担割合は減少することとなる(図3)。
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版) より
https://www.mlit.go.jp/common/001016469.pdf
上記はカーペットに関する説明ですが、壁紙もカーペットと同様耐用年数は6年です。
5年住んでいるということは、壁紙の価値は入居時の6分の1(定額法の場合)くらいにはなっているということなので、借主が負担する額もそこまで下がっているといえます。
但し、壁紙の価値自体が下がっていても、壁紙の破れの程度によっては、修理のための人件費はかかる可能性があります。
それを考えても5万円は高いように感じます。
対策は?
大家・管理会社と交渉したり、簡易裁判所の少額訴訟を使う手があります。
5万円の争いであれば話し合いでの解決が妥当であると思いますが、額が大きい場合などは不動産業者も弁護士を付けてくる可能性もあります。
敷金の問題はガイドラインがあるため、解釈でそこまでもめることはそれほど多くなく、むしろ重要なのは証拠です。
退去時には必ず退去直前のものと分かるように写真や動画を残しておき、交渉の際に相手に示せるようにしておくことが大事です。
写真がない場合、リフォーム業者の請求書通りの原状回復が必要であったと認定されてしまう可能性があります。
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