新型コロナウィルス関連の法律相談まとめ【スマート法律相談】
スマート法律相談の弁護士の勝部です。
新型コロナウィルス関連で、現在までに多く問題となっている法律相談のまとめです。
現在はキャンセル対応や売上の減少などの問題に関する対応ニーズが多いようですが、事態が長引くにつれて新たな法的問題が出てくる可能性もありますし、補償・助成金について新たな制度がスタートすることと予想されます。
弊社でも適時の情報発信、新たなニーズに対応するための施策をしてまいりたいと思います。
【解雇・雇止め】
Q1. 出勤が不安なため自宅待機を申し出たところ、「出勤できないなら会社に来なくてよい」と言われ、解雇された。
A. 契約期間中の解雇についてはやむを得ない事由が必要です(労契法17条)。
現在、休校対応について休業補償をした会社には厚労省の助成金が出されますし、テレワーク環境整備についても助成金の対象です。
仕事の内容によっても異なりますが、雇い主が合理的な努力もせず解雇をしても無効となる可能性が高いでしょう。
(参考)
小学校休業等対応助成金(厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000604068.pdf
テレワーク助成金(厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisikitelework.html
Q2. ロックダウンなどで物理的に出社できない場合、会社は休業補償しないといけないのか?
A. 就業規則に定めがあればそれに従いますが、定めがない場合は、休業について使用者に帰責事由がある場合には、休業補償支払い義務があり、平均賃金の60%を支払う必要があります。
ロックダウンなど、物理的に出勤ができないような事象が発生し、使用者が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできないと認められるような場合には、休業補償の支払い義務はないと認定される場合もあります。
Q3. 明らかにコロナウィルスに感染している人間が職場にいるのに会社が対応しない。怖いので出社拒否できるか?
A. 程度にもよりますが、自己判断で出社しなければ原則として欠勤扱いとなります。もっとも、会社が感染症防止のための措置を取らないというのは安全配慮義務違反(民法415条)に該当する可能性があります。
(参考)
旬刊商事法務(安全配慮義務についての記事あり)
https://www.shojihomu.or.jp/article?articleId=11140558
Q4. 正社員のみテレワークが認められており、派遣社員は申請しても認めてくれず、不公平である。
A. 労働者派遣法30条の3は、派遣先の通常の労働者との間で不合理な待遇の相違を設けることを禁じています。テレワークを認めるか否かの基準についてもこの待遇の問題となる可能性があります。
Q5. フリーランスで企業から仕事をもらっているが、感染症の影響を理由に仕事を減らされ、支払いも延期された。
A. 契約上の適法な措置なのかを確認する必要があります。事前の明確な定めなく条件変更を余儀なくされたり、そもそも契約自体が不当な場合には、交渉の余地があるかもしれません。以下のページも参考にしてみてください。
(参考)
下請かけこみ寺事業(全国中小企業振興機関協会)
中小企業の取引上の悩み相談を相談員や弁護士が受け付けます
https://www.zenkyo.or.jp/kakekomi/
【営業停止、キャンセル対応】
Q1. 感染症問題で大口の施設利用キャンセルがあったが、直前のキャンセル対応にも無償で応じなければいけないのか?
A. 通常は利用規約やキャンセルポリシーに従って対応すれば足ります。問題となるのが「不可抗力」の解釈と、そもそもキャンセルポリシーのない場合です。
不可抗力とは、一般に自己の合理的な支配が及ばない事由を指し、天災、政府または政府機関の行為、ロックアウトなどが含まれますが、単なる自粛要請では不可抗力とまではいえないでしょう。
そもそもキャンセルポリシーがない場合は予約の拘束力の問題となります。x日前までにキャンセルしない場合にはキャンセル料がかかります、という明示的な合意がないとキャンセル料の請求は難しいかもしれません。
もっとも、意図的なノーショウのような場合で損害賠償請求(民法709条等)が認められる場合はこの限りではありません。
(参考)
旬刊商事法務(不可抗力についての記事あり)
https://www.shojihomu.or.jp/article?articleId=11140558
Q2. キャンセル料が高すぎて困惑しています。キャンセル料の相場みたいなものはあるのでしょうか?
A. 飲食、旅行、不動産など、業種によって一応の相場のようなものはありますが、契約の拘束力を否定できるかは別の問題です。なお、消費者契約法第9条は、事業者が契約解除の違約金について「事業者に生ずべき平均的な損害」の額以上を定める部分につき無効と定めています。キャンセル料が不当に高いという場合はこの法律をもとに交渉をすることも考えられます(この規定により無効主張できるのは消費者のみで、事業取引は対象外です)。
Q3. 旅行会社のパッケージツアーを予定していました。渡航先で感染症が多発しており、自主判断で旅行をキャンセルしたところ、キャンセル料を支払うよう言われました。支払い義務はあるのでしょうか?
A. 旅行契約については、「旅行業約款」に記載されています。そもそも渡航できない国・地域を目的地とする旅行が中止された場合、キャンセル料の支払義務はありません。
自主的にキャンセルをしてキャンセル料を支払った後に、そのツアーが中止となったとしても、原則として、旅行会社はキャンセル料の返金に応じる必要はありませんが、キャンセルの経緯などを確認しなければ返金を求められるか、断定的なことは言えない面もあります。
ご不明点は、消費生活センターや弁護士等にご相談されることをお勧めします。
(参考)
新型コロナウイルス感染症に関連した消費生活相談等について
https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kurashi/shouhiseikatsu/309697.html
【感染者の開示】
Q1. 社内で感染者が出た場合、どこまで公にすべきか。取引先には迷惑をかけたくない。
A. プライバシーの問題もあるため、一律に決しにくい問題です。まずは検査機関の判断を前提とし、不確かな情報の流布を避けることです。
感染症法16条は、国と都道府県に対して「発生状況や予防に必要な情報を積極的に公表しなければならない」と定めていますが、企業等はその主体ではありません。その点も踏まえ、結果が出た場合には情報のコントロールについて弁護士等に相談して判断されるとよいでしょう。
【補償・助成金】
Q1. 感染症対策の影響で業績が悪化し、人員削減など、雇用調整が必要となりました況になりました。支援制度はありますか。
A. 雇用調整助成金の制度があります。
雇用調整助成金は、景気の後退等により事業活動の縮小を余儀なくされ、労働者に対して一時的に休業などを行い、労働者の雇用を維持した場合に、休業手当、賃金等の一部を助成するものです。
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例措置で、支給要件が緩和される場合があります。詳しくは、お近くの都道府県労働局または公共職業安定所(ハローワーク)にお問い合わせください。
(参考)
都道府県労働局一覧
https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shozaiannai/roudoukyoku/index.html
全国のハローワークの所在地案内
https://www.mhlw.go.jp/kyujin/hwmap.html
Q2. 感染症対策の影響で売り上げが激減してしまった。国や都道府県が補償をしてくれないのか。
A. 小学校の休校要請に伴う給付金がありますが、それ以外の一般的な減収を補償する制度は開始していません(2020/3/28現在)。
今後、不可抗力(事業者が避けることのできなかった損害)は補償の対象となる可能性があるので、情報が入りましたら周知・解説などをアップする予定です。
弁護士として現時点でできるアドバイスは以下の通りです。
1 感染症対策と減収の因果関係が証明できるよう証拠を残す
2 いきなり破産や再生を検討せず、資金繰りのプライオリティをつける(要弁護士相談)
3 事業者向け、個人向け融資枠を活用する
個人向けとして、緊急小口資金等の特例貸付の拡大がされています。償還時になお所得の減少が続く場合には、償還が免除される場合もあります。
(参考)
小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金を創設します(厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_00002.html
新型コロナウイルス感染症を踏まえた⽣活福祉資⾦制度による緊急⼩⼝貸付等の特例貸付が⾏われます(全国社会福祉協議会)
https://www.shakyo.or.jp/coronavirus/shikin20200324.pdf
新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業者への支援策(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2019/pdf/yobihi_gaiyo_0214.pdf
【支払い猶予】
Q1. 感染症対策の影響で収入が減り、借入金の返済や生活費の支払いができない。
A. 電力会社、ガス会社、携帯電話会社、保険会社(生命保険、損害保険)は、感染症対策に伴う減収があった方向けに、料金等の支払を猶予する措置をとっています。
支払猶予の有無や内容などについては、それぞれの事業者にお問い合わせください。
【債務整理・破産】
Q1. 新型コロナウィルスの影響で売り上げが減少したにもかかわらず、仕入れや家賃などの固定費が支払えず、倒産しそうです。
A. 新型コロナウイルス感染症の流行に伴う経営悪化の相談先として、融資、雇用調整助成金、公正取引等の問題について相談を受け付ける窓口が設けられています。
以下の経済産業省の一覧が分かりやすくまとまっています。
Q2. 個人投資家です。信用売買や証拠金取引をしていたのですが、新型コロナウィルスのまん延に伴う下げ相場で連日値がつかず、ついには大幅な未収金が発生してしまいました。自分の収入ではとても返しきれそうにありません。
A. 破産、個人再生、債務整理のいずれかによる処理をすることが考えられます。
証券会社の方から支払いについて連絡があると思いますが、回答せず、まずは弁護士に対応を相談することをお勧めします。
一般的にギャンブル等浪費が原因の借金については破産免責の対象とならないと言われていますが、投資取引が原因の破産申し立てでも免責が認められたケースは実際あります。
投資の状況や他の債務の内容にもよりますが、破産が難しくても個人再生手続きによって債務の圧縮が認められる場合があります。
【役立ちリンク集】
■ 新型コロナウイルスに関するQ&A(厚生労働省)
発生状況や行政の対策について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00009.html
■ 新型コロナウイルス感染症対策本部(首相官邸)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/taisaku_honbu.html
■ 経営相談窓口(経済産業省)
新型コロナウイルスに関する経営相談窓口です。
https://www.meti.go.jp/press/2019/02/20200228010/20200228010.html
■ 新型コロナウイルス感染症に関する情報について(法テラス)
新型コロナウィルスに関する質問を受け付けており、法律相談例もあります。
https://www.houterasu.or.jp/saigaikanren/houterasu-korona.html
■ 新型コロナウイルス労働問題 全国一斉相談ホットライン(日本労働弁護団)
弁護士が労働者からの無料相談を受け付けます(通話費用は要負担)
詳しい日程と電話番号は以下のサイトをご確認ください
http://roudou-bengodan.org/topics/9247/
■ 新型コロナウイルス感染症の法務対応情報センター(長島・大野・常松法律事務所)
新型コロナウイルスに起因する契約不履行の問題や、企業の開示対応についてまとめられています。
http://www.noandt.com/publications/covid-19/index.html
■ 新型コロナウイルス感染症に係る時間外労働等改善助成金
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10037.html
■ 新型コロナウイルス対策にともなう企業の法的責任とは(ハーバードビジネスレビュー)
外国弁護士による寄稿です。
https://www.dhbr.net/articles/-/6575
■ 新型コロナウイルスに関する生活問題Q&A(東京弁護士会)
QA形式の情報提供です。
https://www.toben.or.jp/news/2020/03/post-542.html
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