Go To キャンペーン、国はキャンセル料を補償せず 率直に言って意味不明では
こんにちは、スマート法律相談の弁護士のカツベです。
物議を醸したGo To キャンペーンですうが、結局東京発着のツアーのみ対象外とすることになり、全体としての中止とはなりませんでした。
変更に伴ってキャンセルが発生した場合も、国はキャンセル料を補償しないとのことです。
この事業は、国内旅行の費用の一部を補助するもので、総額1兆3500億円が投じられる。赤羽一嘉国交相は17日の記者会見で、東京を対象外にすることについて「断腸の思いだ」と述べた。東京をいつから対象に含めるかは、今後の感染状況を踏まえ、専門家の意見を聞いて判断するとした。東京が対象から外れたことを理由に予約済みの旅行をキャンセルした場合のキャンセル料は、政府は補償しないという。
このような内容で実施したところで観光業は救済されるのか、むしろ疲弊させるだけなのではないかという印象もあります。
Go Toトラベル事業については、すでにツーリズム産業共同提案体への委託が決まっており(委託費の提案額は1,895億円)、今更全面中止とする選択肢はなかったのかも知れません。
ツーリズム産業共同提案体は、日本旅行業協会、全国旅行業協会、日本観光振興協会、JTB、KNT-CTホールディングス、日本旅行、東武トップツアーズから構成され、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会、日本旅館協会、日本ホテル協会、全日本シティホテル連盟、リクルートライフスタイル、楽天、ヤフーが協力する。
キャンセル料の問題
国はキャンセル料の補償はせず、当事者間で解決すべきである趣旨の発言をしています。
国土交通省・観光庁GoToトラベル事業概要を見ると
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001351403.pdf より
上記の例に従って、2泊3日の旅行に家族4人で行くとなると、キャンペーンの適用がなくなったことにより、合計16万円(一部クーポン)の差額が出ることになります。
キャンペーンが適用されないなら行きたくない、ということでキャンセルした場合、標準旅行業約款によれば、20日以内のキャンセルの場合は20%のキャンセル料(7日前なら30%)が発生するので、この場合はキャンセル料は8万円かかることになります(前日)。
ただ、そもそもこの場合にキャンセル料が取れるのか疑問です。
ツアー旅行にGotoのキャンペーンが組み込まれており、そのキャンペーンがなくなってしまった場合、動機の錯誤により取り消しができる可能性があるからです。
民法
(錯誤)
第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
(略)
Gotoキャンペーンがあるから旅行の申し込みをしてそれが後から使えなくなった、というのは、まさに「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」に該当するように見えます。
そして、旅行会社で申し込んだ場合、旅行会社のほうもGotoキャンペーンが使える前提の説明をしていたはずですから、まさに意思表示の取り消しができるケースに該当しそうです。
ただ、キャンペーンについての説明の仕方は様々ですから、キャンセル料が発生するのか、それともキャンセル料不要となるのかは、ケースバイケースということになりそうです。
こういった複雑な構図となり、今後法的トラブルに発展しないかが心配です。
率直に言って、これだけの施策変更をしておきながらキャンセルの場合のガイドラインも示さず、補償も一切しないというのは理解に苦しみます。
観光業従事者が苦しんでいるという説明は一見もっともらしく見えますが、このような状況だと受注業者にしかメリットがない結果となってしまい、結果としてますます観光業従事者が疲弊しかねないことを懸念します。
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