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ひと夏の想いで★(上巻)

皆さん、こんにちは。
桜田 りんごです。
今回からは、少しずつ「小説」を
こちらで書いていこうと思います。
読んで頂けたら嬉しいです。

「ひと夏の想いで★」

 窓を開けると、蝉が一斉に鳴きだした。
今年の夏のピークを迎えて、美咲の心も弾んでいた。
ようやく、智樹の試験がおわりこれから二人の楽しみが
やってきたのだ。
「美咲、そろそろご飯たべなさい!」
母親の声が、壁を突き破る声に、美咲は一息をついて
「はーい。今行くから」
身体を起こして、言った。階段を下りてリビングの扉を開けると、わかめと豆腐のお味噌汁の匂いが広がっていた。美咲の好物の一つだった。
「早く、食べないと遅れるわよ。今日は、出かけるんでしょ?」
彼女は、柔らかい卵焼きを食べながら聞いた。
「うん、やっと智樹がテスト終わったし。ようやく海に連れて行ってくれるから」
そう言って、時計を確認しながらごはんを一口食べた。
「そう、よかったわね。じゃぁ、智樹くんと一緒に後で食べれるようにこれも持っていきなさい」
そう言って、大きなおにぎり3つに煮物を入れたタッパーを紙袋に入れたものをテーブルに用意した。
「ありがとう~。いつも、智樹が美味しいってくれるけれど、私が手料理していると勘違いしているかも」
美咲は、未だ料理ができないことを必死に隠している。いや、もしかすると智樹は気付いているかもしれない。ただ、直接いわないだけなんだとも思った。
そんな智樹と付き合って、今年で5年目に突入しようとしていた。

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