男性育休の未来を考える
1. 男性育休の現状
女性の取得率が2007年度以降8〜9割で推移し、2020年は81.6%だった一方で、男性の育休取得率は長らく低迷を続けてきた。
政府は2002年に少子化対策として「2012年までに男性の育休取得率10%を達成する」ことを目指していが、目標及ばないままであり
「17年までに10%」「20年までに13%」「25年までに30%」
と目標を先送りしてきた経緯もあった。
またここで未婚率の割合も併せてみていくと、感覚通り全体的に上昇傾向にある。
未婚者の割合(未婚率)は,男性が31.4%(1669万人),女性が23.2%(1315万人)と,男性の方が高くなっている。
これは,男性が女性に比べ初婚年齢が高いことで、若い人の中に未婚者が少ないことからあらわれる傾向で男性の未婚率も,女性と同様に上昇しており,年齢別に見ると25~29歳では昭和60年の60.4%から平成17年には71.4%に,30~34歳でも28.1%から47.1%になっている。
また夫婦で子どもがいない割合は6.2%(1977年の2.06倍増)である。
前述した男性の育児休暇取得率を加味すると、
25~34歳の男性で既婚者子持ちで育児休暇取得を経験している男性の存在は
20代後半で3%・30代前半でも6%程度であることがわかる
つまり結婚適齢期における身近な同年代で
20人に1人程度しかいないことがデータからも読み解ける
育児休暇の経験がある同年代存在は貴重であることがわかる
全国の15歳以上人口の配偶関係
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2005/nihon/pdf/01-04.pdf
政府は「2025(令和7)年までに男性の育休取得率を30%にする」という目標を掲げているが、その目標に届くまではまだまだほど遠い現状だ。
また「育児休業を取得したいのに、取得できなかった」という男性社員が37.5% にのぼるという調査結果も出ており、取得したい時に希望通り育児休業を取得できる・より身近に取得者の存在がいる社会になれば、30%という目標は達成できるかもしれない。
※ 厚生労働省委託調査「平成 30 年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための 調査研究事業 報告書 労働者アンケート調査結果」
2. 育児・介護休業法 改正のポイント
この2022年4月より上記数値目標達成に向けて、下記4点の法改定を行われた
① 企業に対して、妊娠や出産を申し出た従業員(男女問わず)に制度の周知や取得の意向確認を義務づける。
② 大企業(従業員1000人以上)には、男性の育児休業取得率を毎年公表するよう義務づける。
③ 男性が柔軟に育休を取得できるよう、産後8週間を対象とした「出生時育休」を新設する。
④男女問わず、1歳までに育児休業を2回に分割して取得できるようになる。
要件を満たせば、1歳以降もさらに分割が可能になる(「出生時育休」と併用すれば、男性は1歳までに計4回の育休取得が可能)。
つまり、今後は大手企業では男性育休の取得率の公表などを踏まえて、
国も本格的に30%という目標達成に向けて法改正など大きな変革を行っている
3. 新生児ワンオペ育児経験を通じて
2022年2月に長女が誕生
コロナ影響で立ち合いはできずその後、妻と子どもが退院した3月上旬
退院当日の夜に妻が悪露による大量出血で再入院
娘の入院がコロナ感染対策によりできず、
急遽、新生児の娘との1週間にわたる2人暮らしがスタートした
家庭内での緊急事態宣言に伴い
早速、新設されている8週間以内で活用可能な”出生児育児休暇”を取得した
新生児育児における主な内容を列挙すると
❶ 授乳(2~3時間毎・ 調製から投与終了まで30分 / 回 程度)
❷ おむつ交換(大小合計して1日10〜15回)
❸ 沐浴
育児”休暇”という言葉は程遠いほどの業務量をこなす必要がある
在宅勤務を中心に仕事しながらでの育児も挑戦したが
新生児育児は 決して”ながら”にできるものではなかった。
上記スケジュールの通り、授乳や夜泣きなど昼夜関係なく続く育児
慢性的な睡眠不足 ・日照不足・ 運動不足となる
可処分時間もなくなり趣味や自分一人の時間は面白いほど消えてなくなり
多くの経産婦が産後鬱になる理由も納得できる、劣悪な生活リズムであった。
当時自身の会社も大型の早期退職による組織編成に伴う引き継ぎがあり、
長期間連日での休暇取得は難しく仕事をしながらの間欠的な育休取得であったが、
仕事との両立は非常にハードであった。そんな中でも気遣ってくれた同僚先輩の存在は本当にありがたかった。
大変な面ばかり紹介したが、それ以上に日々表情が変わるふんわりミルク臭の
尊い新生児期を近くで過ごす日々には大変さ以上の人生でも代え難い充実感と幸せがあった。
4. 最後に
男性は妊娠というプロセスを経ることなく、
また新生児育児の中心は授乳であることからも
出産直後からスムーズに子育てに参画しにくさもある
今回私は妻の緊急入院があり、新生児ワンオペ育児という貴重な経験ができたが
体育会出身で体力には自信がある方であったが本当に毎日ヘトヘトであった。
改めて、新生児育児は産後の母体にはあまりにもハードであり
男性の育児休暇取得による子育て参画への重要性を肌で感じた。
その頃からずっと”イクメン”という言葉に違和感を覚えていた。
男性の育児休暇取得は目的ではなく、
上記期間に妻と寄り添うためのあくまで手段であると思った。
”男は働き、女性は育児に専念”という従来の
仕事か家庭のトレードオフな高度経済成長期の固定概念を破壊する必要がある
男性の育児休暇を取得推進するにあたっては 育児”休暇”という言葉を変えて、”育児を通じた人材育成・マネジメント力の強化”など職務経歴書や社内においても評価される経験として昇華していくべきかと感じた。
また冒頭のデータからも現在、大半の管理職は育休取得の経験がなく、具体的なアドバイスは期待できない。私自身はワーママ同僚や助産師の友人、Youtuber助産師HISAKOさんに多くを教えてもらい、見様見真似の体当たり育児であった。今後はより同年代の男性社員から、男性インサイトに寄り添った育児情報発信やナレッジ共有、ロールモデルの存在が重要になってくると感じている。
最後に、妊娠・出産というのは奇跡の連続だ
母子ともに健康 という耳障りの良い言葉もその奇跡の一つであると実感した
今回命懸けで出産してくれた妻とサポート頂いた義理の両親に感謝しながら、
育休取得を通じて子どもの成長を楽しみ、新たな働き方へと挑戦していきたい。
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