中国企業の海外資金調達の今後
前回は、近年のHuawei(華為)への米国規制強化の流れを受けて、中国政府や中国企業による、半導体関連のサプライチェーンの国内への内製化について、書いてみました。また数日中(2020年5月30日までに)、トランプ大統領から新たな対中制裁が発信される、とのニュースも出ております。
その対中制裁の一つにもなりえる話題は、中国企業による米国市場(NYSEやNASDAQ)での上場制限案であります。下記記事によると、
『米取引所大手ナスダックは新規上場ルールの厳格化に乗り出す。海外企業は新規株式公開(IPO)時に、最低でも2500万ドル(約26億円)、または時価総額の25%相当の金額を投資家から調達するよう義務付ける。監査状況についても新たな審査基準を設ける。....
ナスダックは上場ルール変更案の中で、制限の対象として中国企業を名指ししていない。ただ、ナスダック上場を目指す海外企業の多くは中国資本で、資金調達額が小さく、流動性に乏しい銘柄も目立つ。新ルール適用によって中国企業が最も影響を受ける。....
ナスダックは上場申請企業の監査状況をより厳しく審査する方針だ。SECや上場企業会計監視委員会(PCAOB)の調査に制限がかかっている国・地域の企業を対象にする。PCAOBは上場企業の会計監査を担当する監査法人を定期的に調査し、財務諸表の質を担保しようとしている。一方、中国政府は米当局による自国監査法人への調査を認めていない。監査を巡るナスダックの新上場ルールも事実上、中国を念頭に置いたものになっている。』
不幸にも、というのか、このような規制案導入へきっかけを与えてしまったのが、2019年12月期の売り上げを不正会計(売り上げの水増し?)にてNASDAQから上場廃止通告を受けた、中国カフェチェーンの瑞幸珈啡(ラッキン・コーヒー)である。同社のCEOとCOOは不正会計を理由に解任された、とのこと。
少なくとも米国市場は中国企業のIPOなどで、一定程度の恩恵を受けていたとはいえる。今後は、アリババなど例外はあるものの、中国企業の米市場上場はかなり減ってくるでしょう。(日本企業のADR(American Depositary Receipt/米国預託証書)一覧はこちらをご確認ください。)では、中国企業はどこで資金調達するのでしょうか?当然香港やシンガポールが恩恵を受けると想像できる一方で、中国国内の監査法人的なものが、今後も中国企業の海外上場の壁になるとすると、サウジアラムコが国内市場のみでしが上場してない(できてない?)状況に似ていると勝手に仮定し、今後は国内市場に注力し、上海や深圳市場に上場して、と考えるのもありなのでしょう。同時に、日本市場は恩恵を受けにくいと、感じております。