忖度の『色』も時間と共に変化する?
忖度というワードは、以前安倍政権時に森友学園問題が勃発した際、森友学園の理事長が発言し、いつの間にか一般化したワードだった、と記憶しています。
忖度自体は物事を円滑に進める上でとても重要な考え方であり、日本の『曖昧さ』が残る文化の良い一部分であると個人的に考えます。政治の世界でも忖度はあるべきでしょうが、そこには良い忖度と悪い忖度がある、と下記記事でも言っていますし、その通りだと思います。
そして今回注目されている総務省と東北新社との関係と、東北新社に出された「ザ・シネマ4K」の認定取り消しについて、私が考えるに当時の総務省官僚は、所謂『良い忖度』をしようとしたのでは、と思う。
この度総務省が問題視しているのは、東北新社が衛生放送事業の申請時に、外資規制(外国資本が20%を超えないというルール)違反があり重大な瑕疵があった、という点である。そこに対して、菅首相の長男を最近まで雇っていた(なのか、雇ってあげていたのか、分からないが)東北新社の社長は、事前に総務省官僚に相談済みだった、と発言したわけである。
放送事業会社「東北新社」の中島信也社長は15日、衛星放送事業の一部が外資規制に違反したことについて「(認定後の)2017年8月に違反の可能性に気づき、総務省の担当部署に面談し報告した」と述べた。総務省は「当時の文書やメモで報告を受けたというものはない」とした
総務省官僚の立場なら、そのような正直な連絡を東北新社から受けてどうするだろう。ルールに実直に、認定取り消しと動けば、菅首相の長男がいる東北新社のメンツは潰れ、菅首相(当時は官房長官)から何がくるか想像もつかない。一方で実際には、外資規制のルール自体は形骸化されている、という下記ホリエモンの指摘が正しいのであれば、東北新社の認定を外資規制違反のみで取り下げるというのは、既存メディア企業への負の影響(もしかして認可取り下げも十分あり得る)が計り知れないかも、という想像は容易にできる。
であるならば、将来の自然的な是正(外資規制を下回る水準に下がっている)を期待して、総務省官僚が大ごとにしないように見逃す、という『良い忖度』を図ったと考えるのが妥当ではないか。でも今回、週刊文集による菅首相の長男が絡んだ総務省官僚との接待問題報道を発端とした、一連の総務省関連のスキャンダルによって、当時の良い忖度は悪い忖度へ、急激に色を変えてしまったわけだ。特に外資規制は、対中や対韓など外交問題にも関わる可能性もあるわけで、規制緩和に動かしにくい政治的なトピックであろう。
ルールベースで行動することの柔軟性(フレキシビリティ)低下を、官僚の忖度とやりくりで是正できるように動いていたのに、そのやり方に政治がケチをつけた形とも考えられる。個人的には後味の悪い印象が残る。