「本を囲んだ語り部屋」2025/1/12谷川嘉浩さん『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』
日曜朝のX(Twitter)スペース「本を囲んだ語り部屋」
1/12は谷川嘉浩さんの『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』を取り上げました!
真似できないほどの情熱を持ち、心の底から湧き上がる衝動を糧に行動を起こしていく人を見たとき、果たして自分にはそれほどまでの衝動があるだろうかと思ってしまうことがあります。本書は京都市在住の哲学者である谷川さんが、「衝動とは何か?」について、多くの漫画作品なども事例に取り上げながら哲学的に深めていきます。谷川さんは衝動を「自分ではコントロールできないくらいの情熱」と定義しています。そして、衝動こそが自分自身を解き放ち、まだ見ぬ可能性へと突き動かす原動力になると力説しています。果たしてどんな衝動が自分の中にあるのかを見つめるきっかけになる、刺激的な1冊です。
語り部屋では、冒頭、衝動について理解を深めていきました。谷川さんは、衝動はどこか「幽霊」に似ていると言います。気づいたら幽霊に取りつかれているように、気づくとメリットやデメリット、コスパ、世間体などとは無関係なところで突き動かされているのが衝動だと言います。その中で、モデレータ仲間はチクセントミハイの「フロー理論」にもつなげてくれました。没入している瞬間は気づかず、あとから気づくのがフロー状態。衝動も同じようにあとから気づくものなのかもしれない、という話がありました。谷川さんも、衝動は「強さ」ではなく「深さ」であり、「表面から見えないほど奥深く」から生まれてくると言います。
自分でも気づきにくいからこその衝動ですが、だからこそ見つけることの難しさがあります。モデレータ仲間も、自分の衝動がよくわからないという話をしてくれました。その中で谷川さんが提示している見つける方法の一つが「浮いてしまった経験」です。気が付くと空気を読めずに周囲から浮いてしまったという経験は、大なり小なり誰しもあるように思います。衝動というとイメージが付きにくい場合もありますが、浮いてしまった経験であればイメージがつかめますね。「浮いてしまうことは個性でありアイデンティティである」という言葉は印象に残りました。また、衝動がよくわからないという話をしていたモデレータ仲間ですが、周囲から見ると衝動の片鱗を感じていたりするのも面白いですね。
また、衝動を知るために「欲望年表」を作るという話も印象的でした。理由がないのが衝動だからこそ、なかなか直接的な輪郭を掴むのは難しい。だからこそ、衝動と思われるものの周辺にある社会的背景や状況をたどることで、衝動の輪郭が見えてくるのではないかという話がありました。おぼろげに見えてきた点を少しずつ掴み、その点をつないでいくことで見えてくるものがあるように思います。そして、三宅香帆さんの「全身全霊」と「半身」の考え方にもつながり、衝動を緩やかに掴んでいくための「半身」の大切さも語り合いました。気が付けばあっという間に1時間が経過していた語り部屋。この場を楽しみながら没入していること自体が、ひとつの衝動だったりするのかもしれませんね。