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「本を囲んだ語り部屋」2025/2/9池谷裕二さん『夢を叶えるために脳はある』
日曜朝のX(Twitter)スペース「本を囲んだ語り部屋」
2/9は池谷裕二さんの『夢を叶えるために脳はある』を取り上げました!
本書では気鋭の脳科学者である池谷さんが、「脳」という物質と「心」という現象に関して、さまざまな角度から考察し輪郭を与えています。
タイトルには『夢を叶えるために脳はある』とあり、一見精神論的なことがテーマかと思った利しますが、そこには脳科学的な仮説の意味が込められています。「なぜ意識があるか」は神経科学最大の謎の一つですが、「夢がもとになって現実の意識が生まれた」という仮説があるといいます。「現実の意識よりも先に、夢があった」ということを考えると、夢と意識の主従も逆転してくる感覚になるから不思議です。
語り部屋では、池谷さんのこれまでの著作の面白さにも触れながら、このような専門的分野の本との向き合い方について語り合いました。モデレータ仲間からは「へー、そうなんだ」で終らずに知識・知恵に変えるためにはどうしたらよいか?という問いがありました。その流れから、本書に書かれていた「交互学習」につながりました。「交互学習」とはテーマをしぼって学習を進めるのではなく、あえて単元をまたいで勉強するやり方です。ポイントは「わかった」となる前に別の分野に切り替えることだと言います。脳科学的には、学習はモヤモヤしたなかで前進していくほうが効果的という話を受け、いかに様々なテーマを横断し、「分からない」を楽しんでいくかが大事だと感じました。
「学ぶ」上では「分かる」ことを目的にしがちです。しかしそれを目的にしてしまうとなかなか「分からない」を楽しむことができなくなってします。自分は教育系スタートアップの複業先生という社会人が小中高の子どもたちに出前授業をするサービスに関わっています。その中で、小学校6年生の道徳クラスで「子供たちの考えてきた問いを一緒に考える」授業に関わりました。その授業は、例えば「あきらめないためにはどうしたらいいか」「人に流されないためにはどうしたらいいか」などの子どもたちならではのピュアな問いを大人も一緒に考えていく形式でしたが、大人こそ考えさせられる時間でした。そこに決して正解はありませんが、そのような問いに向き合うことは大人にとっても大事な学びになることを感じることができました。そして子どもたちの前で、「分からない」を楽しめている大人でいたいと思ったことを思い出しました。
そして最後は外から自分を見ることについて語り合いました。自分のことは自分が分かっていると思っていたりしますが、冒頭の意識の話を踏まえると、自分というものは曖昧であると感じます。その中でモデレータ仲間がSF小説である『プロジェクト・ヘイルメアリー』につなげてくれました。この本は主人公が記憶をなくした状態で宇宙船にいることに気づくことから始まり、自分の行動や思考を通じて自分が何者であるかを推論していく場面があります。そこには「側からアイデンティティを埋めてゆく面白さ」があるという言葉もありました。この主人公のように自分を側から推論していくとどういう自分を定義できるのかが気になってきました。
今回の語り部屋も新しい問いと発見に満ちた時間でした。引き続き「分からない」を楽しみながら、ワイワイと語り合っていきましょう!