「本を囲んだ語り部屋」2024/12/1谷川嘉浩さん『スマホ時代の哲学』
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12/1は谷川嘉浩さんの『スマホ時代の哲学』を取り上げました!
「失われた孤独をめぐる冒険」というサブタイトルの本書では、スマホなしでは生きられない現代の課題を哲学を軸にひも解いてています。スマホによって可能となった「常時接続」。私たちは常につながりマルチタスクをこなしながら、結果として何一つ集中していない希薄な状態に陥っていると指摘します。そしてその世界で失われているものは他者から切り離されて何かに集中している状態である「孤立」、そして自分自身と対話している状態の「孤独」だと言います。この本を通じて「孤立」と「孤独」の大切さを改めて考えることができました。
語り部屋では冒頭、人間の自己逃避という本能について語り合いました。本書ではニーチェやオルテガの著書を参考にして、自分自身から逃避するために、あえて『激務』に身を投じたり、自分を疑うことを避けたりする傾向が指摘されています。その中でモデレータ仲間からシェリー・タークルの『一緒にしてもスマホ』という本を紹介してもらい、接続によって自分らしさを確立できる一方で、接続が孤独からの逃避にもなりうるという点について、深く考える機会となりました。
その流れで、参加者の方から「駄サイクル」という概念について教えてもらいました。『駄サイクル』とは、自称アーティストたちが集まり、互いに称賛し合うことで自己顕示欲を満たす閉じたコミュニティのことだと言います。SNSも自分が見たいものを見れる最適化しやすい環境であり、知らず知らずのうちに「駄サイクル」になってしまう可能性があると感じました。その時に大事なのは自分に対してどこかで疑いを持つ哲学的態度なのかもしれません。そしてそのためには常時接続に対して意図的に「孤立」と「孤独」の時間を持つことが大事だと感じました。
語り合いを通じて「孤立」と「孤独」は決して寂しいものではなく、自分をケアするための大事なものだと感じました。自分の中にある何かしらの衝動に向き合いながら、自分のためだけの作品を作っていくことはまさに自分と向き合う哲学的な時間になりそうです。また時には瞬間的に消費される「フロー」的なアウトプットではなく、後に残る「ストック」的なアウトプットを意識して、自分自身のために積み重ねていきたいですね。