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デ・キリコ展を観て

9月末の週末、たまたま関西にいる用事があったので、いくつか美術展を見てきました。その中で、神戸市立博物館で開催されていたデ・キリコ展はとても印象深くおすすめです。神戸より前に東京で開催されていたものはすでに終了しております。神戸では12月8日までやっているそうです。

デ・キリコ(1888-1978)は形而上絵画というスタイルを確立したことで知られています。シュルレアリスムの発展に大きな影響を与えました。展覧会では、画家のそれぞれの時期の作風の変遷を分かりやすく紹介しており、とても勉強になりました。私は画家ではありませんが、創作家としていくつか関心を持った内容がありました。デ・キリコの作風はマヌカン(マネキン)や部屋、古典絵画など、いくつかの定型モチーフをもとに語られることが多いです。作曲家も似たようなモチーフ(音型だったり、響きの作り方だったり)でいくつも曲を残し、その中から抽出されるエッセンスを「作風」や「スタイル」と呼ばれたりするので、親近感が湧きました。

特に注目したのは、デ・キリコが古典美術の研究に没頭した時期に、どのようにそのエッセンスを自分の作品に取り入れていったかということです。古典作品からの引用なども多く見られましたが、引用した作品に自作の中でしか発揮されない意味を付与している点は、引用作曲と似ていると思いました。また、晩年には自分の人生の幾つかの時期の作風を自由に総括しながら柔軟で自由な表現に到達していたのも興味深かったです。私自身、自分の若い頃の作品を歳をとってからどのように眺めるのか、関心を持ちました。人生をかけて創作を続けた人の創作物をまとめて鑑賞するのはやはり圧巻です。

いくつかの作品は写真撮影可能だったので、下にご紹介いたします。関心をお持ちになられたら、ぜひ行ってみてください。

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いなもり やすたき/作曲家
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