ブックフォールディング頑張ったのに
「ブックフォールディングって知ってますか?うちでワークショップをやりますが、興味ありませんか?」
友人のお寺さんが声をかけてくれました。しかし、入試も近づき卒業生を送り出す時期で落ち着かない毎日。その日も予定が入っていました。
でもどんなものだろうという興味はあり、ネットで調べたところ、本の各ページを一枚ずつ違うところで折っていって、その本を閉じると文字や、記号が浮き出てくるというものでした。
(バーコードは同じ長さの線分が並んでいるだけなのに、長方形に見える。長さが違う線分が並んでいると別の形が見えてくるみたいな感じかな。シマウマのシマだけ描いてもシマウマに見えるみたいなもんかな)
みたいなことを考えながら、作り方をYouTubeで調べたら、外国の人が説明しているものがいくつもありました。
どの人も立派なハードカバーの洋書(外人だから)を惜しげもなく折っていました(中にはBibleを折ってる人も。さすがにお経本は折れないなぁ)。要らなくなった本でいいと説明していますが、私の手元には立派な要る本と、立派でない要らない本しかありません。本を折るという行為も少し抵抗がありましたが、そんなこと言っていたらbookをfoldすることの根本的否定で何も始められません。なんか本ないかなぁと思って、学校内を探しました。
(チャート式を折るのも抵抗あるなぁ)
(あっ、置きっぱなしになっていて、遠からず処分される小冊子が談話室にある。あれでいいや)
うちの系列の学校の偉い人を紹介してある冊子。中には偉くなった高校以来の友達も載っています。(ごめんT林)と思いながら彼の顔を折り曲げました。授業のない3、4時間目を使って星形の完成。
その後の、授業に持っていったら、生徒たちが
「すごーい」
と言ってくれて、ちょっと嬉しかったです。しかし星は単純すぎて達成感がイマイチ。
誰もやってないのがいいなぁと思い、梵字に挑戦することにしました。インドから仏教と共に日本に伝来した文字です。もちろん、YouTubeの外国人は誰もやっていませんでした。
しかし星と違って、形状が複雑。もう一冊もらってきてまたT林の顔を折り曲げて作りましたが、ちゃんとした形になりませんでした。
マジになりました。
これ以降、頭の中には中島みゆき“地上の星”が流れ始め、プロジェクトX「梵字のブックフォールディング化」が始まりました。
星よりもサンプリングの間隔を細かくしないとスムーズな曲線を表現できない。情報の授業のアナログ信号のデジタル化のところで似たようなこと教えたが、どれくらい細かくとれば、情報の欠落を容認できるだろう。
さらに、選ぶべき本も考える必要がある。不要でしっかりしていて、ページ数が多いものでなければならない。早くも計画は行き詰まった。
ある日、地下鉄に乗ったとき、改札口付近に新築マンション紹介のフリー雑誌が大量に並んでいた。ふと手に取ると328ページあった。ということは164枚の紙が収容されている。
(これだ!!)
ただちに1冊いただき、さっそくそれで作ってみた。
しかし!!
梵字をなめてはいけなかった。164のサンプル数では梵字の滑らかな曲線を表すことは難しかった。さらに表紙の脆弱性が決定的な打撃になった。完成した時に折り曲げられて厚みが倍増した内側のページの反発力を抑えられない上、自立させることもできない。立派な本でなければならない理由を痛切に感じた。
また、各ページのカラー写真が障害になることが判明した。マンションを売りたいのだから綺麗なページにしたいのだろうが、多色刷りが邪魔をして、浮き出た文字の稜線を不明瞭にする。
盲点だった。
(この本を出している会社にしてみれば、「そんなの知るか!」だろうが…。)
あるとき
色があまりついていない洋書のような(Bibleのような)紙を模索していて、ふと教員室の片隅に目が行った。
(ああっ、あれだ!!)
見つめた先には、過去のテスト用紙の余り。捨ててしまうのは勿体ないので、計算用紙などに使っている教員も居るが、使い切れずに段ボールに溜まっていた。
(テストならば黒い文字しか印刷されていない。本から探したからいけないんだ。逆だ!!これを本にすればページ数も思いのまま。理想の解像度のものが作れる。それを堅い綴込表紙で挟めば、しっかりしたものができる。)
次は解像度の決定である。ネットから気に入った形の梵字をとってきて、画像処理ソフトで背景を透過させ、Excelに読み込んで罫線をたくさん引いて考えたところ、サンプル数を300にすればかなりの精度で梵字を再現できることがわかった。
テスト用紙150枚を半分に折って300枚にし、パンチで穴を開けた。また、本を折っていくと、すでに折ったページを押さえておかなければならかったが、バラバラの紙であればその必要もなく、最後にまとめて本にすればいいということにも気づいた。念のため綴じた後のズレを防ぐため糊付けをして完成。
男(たち)の長い戦いは終わった。エンディングテーマ(スタート)
誘ってくれたお坊さんに写真を送ったら「すごい!の一言」と褒めてもらった。
生徒に見せたら、「なにこれ?」
ここでエンディングテーマが止まりました。
星ではあんなに褒めてくれたのに
(いいよ。どうせわかってくれないよ。まぁ、梵字知らないんだから。
でも
お寺で生まれ育ち、梵字を見慣れている息子ならきっとわかってくれるはず!!)
と、意気揚々と見せたら
「すごいすごい。いいねえ、お父様は(ひまで)」
と言われてしまいました。