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これで、女子高生活を!!

「これで 女子高生活を!!」

「終わりまーす!!」

うちの生徒とOGならばこの意味がわかります。行事をやり切ったときに、万感の思いを込めて生徒全員で叫びます。

先日の、卒業式。本来ならば、全校生徒と保護者の方々がびっしり入るホールを贅沢に使って、3年生だけを散りばめ、担任が全員の名前を呼んでから、クラス代表が一人だけ壇上に上がって校長先生から卒業証書を受け取るという形で行われました。
1・2年生も登校して先輩を送り出したかったでしょうし、3年生も後輩に言葉をかけたかったでしょうに、と思うと不憫でした。

しかし(この形もいいな)と思った点もありました。教室に戻ってから担任が、一人一人に卒業証書を授与したのです。

せっかちな私はHRは高速で行います。うちの子たちもそれを知っていて、HRが始まると

「配るものあります?」

と言って、何人もが追いはぎのように来て、並行処理でどんどん配ってくれます。

でも、今回はさすがに取りに来ませんでした。

「前から卒業証書送るから、自分のやつとってー」

というのは、素っ気なさすぎるかな?でも、担任からなんて重みもないし、
(かっこつけないで、いつものように効率的にやってよ)

って思ってるかな? と悩んで、前の方の子に聞きました。

「いつもみたいに、前から送る?」
「いやいや、さすがにこれは一人一人ちょうだいよ」

ということで、プチ卒業式を教室でやりました。
教員になって初めての経験。例年は厳かに粛々と全員が校長から受け取ります。私語などは許されません。
でも
今回は遠慮はいりません。

私:「小野小町!!(そんな子居ません)」
小野:「はい!!」
みんな:「コーマチー!!」

みたいな感じ。
拍手の中、一人一人に、「おめでとう」と目を見て手渡ししました。

その後はみんなでビデオを見ました。
当初、HRの後に、<卒業を祝う会>を行うはずでしたが、これも中止。ずっと前から準備してくれた担当の子がかわいそうでした。その子が

「明日、HRのときに先生のパソコン貸してくれませんか?」

と前日にLINEをくれたので持っていったら、教卓のAV機器にパソコンをつないで、<祝う会>で流すために作った各クラスの担任からのコメントを収録したビデオを見せてくれました。音楽も上手に入れて、編集にとても工夫してあったのを感心して拝見しました。

それが終わったら、また新たに3人クラスの代表として前に出てきて、まず素敵な花束をいただいて、色紙とその他に2つの包みをプレゼントしてくれました。
色紙はいつもポスター作成などで活躍する子が表紙を描いてくれていました。お坊さんがかごを編んでいる絵を中心に、クラスTシャツのデザイン・クラスで上演した累(かさね)のシンボルである口紅などが描かれていて、桜のシールが彩を添えていました。
それを開くとクラス43人一人一人からのメッセージ。こんな時期なのにいつ集めたんだろう。大変だっただろうなと感動。それだけでも十分嬉しいのに、
「包みを開けてぇ」
という声。みんなが見つめるので焦っちゃってなかなか開けられませんでしたが、出てきたのは黒い木製の箱。メッセージには
「名前入りのチョーク入れです」
名前入り?傾けたら側面に筆記体で私の名前が、活字体で『68回生A組』と印刷されていました。焼き印のように見える素敵な印刷でした。特注です。
(これから毎日使って、その度にこの子達を思い出すだろうなぁ)

次の包みを開けたら日めくりカレンダーが出てきました。月、日、曜日の三つだけでなく4つ目にめくるところがあり、クラスの思い出のいろいろな場面の写真がいっぱい印刷されていました。写真選びもその順序付けや配置などのデザインも大変だったことでしょう。そしてこれは素人ではできないので注文して作ってくれたみたいです。お金もですが、このためにかけてくれた時間を思い浮かべると感謝の一言。

それが終わったらいよいよご挨拶。私は人前で話すのはあんまり好きじゃありません。いつもはクラスの子たちにメッセージを長めのLINEを送って済ませてしまいます。文章なら読みたくない子は読まなくてもいいから。でも話すとなると話し終わるまで人を拘束することになるので、興味のない人は苦痛以外のなにものでもありません。だからクラスに向けて金八先生のように長く話すことはまずやりません。
でも今日だけはお話をしようといつもならLINEで送る文の内容を7分時間をもらって話しました。結婚式でも5分にしているので、7分は相当長いのですが、最後ぐらいはと思って話し始めたら、みんなも最後ぐらいはということか、黙ってこちらに目を向けて聞いてくれました。

でも話し終わったらなんかしんみりしてしまって。そこで冒頭に書いたやつをやりました。

「これで女子高生活を!!」
「終わりまーす」

その後は一人一人と写真を撮っておしまい。ありがたいことに私ごときに並んでいただいて、ミートミッキーみたいになりました。

私も定年まで10年。あと何回担任ができるかわかりません。でもこの学年も今までの担任した子たちと同様

「担任っていいなぁ」

と思わせてくれる子たちでした。