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えいね 空 いびつ
【短編】神経の話です
川のほとりに座って小石を投げていると肩に手が置かれて小石が投げられませんでした。
手は先生のでしたが、やけに大きく感じました。私はというと、雨上がりの小石には泥が付着しており、指先と爪の中に溜まった新鮮な泥の匂い……と、予定としての積まれた小石――を前にして身動きが。
先生はどうして『あんなこと』をしたのか聞いてきましたが、大人はどうしてか行動には全て口で説明できる理由があると思いこまされているようです。
それは生理的嫌悪感と言うほかないのですが、他の大人への説明の為、もっともらしく理由を仕立てなければならない、それ自体に不愉快を。
よく先生は私に『優しく』してくれましたから、きっと今回も味方をしてくれるだろうと思っていましたが、肩に置かれた手はどんどん大きく、力強く痛みすら私に。
すこし『イタズラ』したぐらいで、みんなに謝らなきゃいけないのです。それまでは先生は、手を。生理的嫌悪を理性なり常識なりで抑え込み振る舞う。それが規範的あり方なら、なんて暗く息苦しいのでしょうか。
『瑛音』
はい、なんでしょう。
橋の上で事故でも起きたのか、警察の車両が集まってきました――ので、話題を逸らしても先生は。もうおかまいなしです。そんな汚れた誠実さの性格なので、肩は両手に支配されました。やっぱり大きいので、サッと逃げれるビジョンが浮かびません。
『えいねは間違えました。だからごめんなさい』
大きな手が、私を包んでいます。
おおきな 手 が私を
手が私を それはおおきいです
⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️
罪を洗い流すには
神経をキレイにしなくてはなりません
血のこびりついた神経を
いっこ いっこ
汚れた雑巾でぬぐうのです
配列を元通りにすれば
罪は減り
肉体の活動もわ
た
しの今までといっしょ
小石がくずれて抱き寄せられた肉体は
先生の胸と腕と手の中でした
【えいね】は暗く息苦しいですが
あたたかかったです
生理的承認が湧き上がり
ゆだねました
溶けているので いいかなって
ダレかがわたしたちを引き剥がそうとしています
でもお互いが 神経がつよく結ばれているので
水族館で見た もつれたクラゲを
血や内臓も混ぜ合わせたいですが
現実的ではないのでヒトは子孫を残すのでしょう
罪に対する刃は わたしだけに
わたしだけに向けてほしいのに
拘束と監禁と時間でしか ヒトの罪は
それだけならまだしも
血を分けた子にすら
せんせい
わたしは【 子 】をのぞみません
だから神経を溶けあわすのを 今すぐ
今スグやめましょう もう
⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️
全身が新鮮な草の香りと泥
【えいね】の空は
わたしの 空は
明日は もっと