せめてベランダで
まだ誰も起きておらず、この静寂こそが私にとって特別だと再認識した。女揃えば姦しく、義父の声もやまびこのようで。
トンビの鳴き声と小鳥の囀り、ひっきりなしの車とコーヒー豆を砕く音だけがここにはある。
必然黙考と、深い後悔が新年を汚した。
『やっぱあの無人島（数人在住）で全裸になっておけばよかったな……』
確かあの日は水着を脱ぐのが面倒だという理由と、古びた小屋があった為、完全に無人かどうか疑って身を硬くしていたのだ。
露出狂は主に他人に見せる、社会の中での解放などが主な動機だろうが、私は誰にも迷惑かけず服を脱ぎたかっただけなのに……なぜやめた？
露出症では、性的興奮を得る目的で他者に性器を露出したり、性行為の最中に他者に見られたいという強い欲求を抱いたりします。露出障害とは、露出したいという衝動や空想を実行に移してしまうか、そのような衝動や空想のために苦痛を感じたり日常生活を送れなくなったりする場合です。
……流石に苦痛ではないが、新年の抱負として最初に思い描く程度には気にかけている。
音楽家が路上で演奏する、ダンス経験者が街中で急にステップを踏む――これらと性質は同じなのだろう。
やはり、お風呂で服を脱ぐ……ぐらいか。ベランダで全裸になる習慣を身につけたとして、そこに特別感はあるだろうか。
義父が、今年の双子座は何かしら叶うみたいな発言をしていた。全ては繋がっている。
ジェミニストおみゅりこ。は確かな望みを持っている。