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第67回:医薬品ネット販売拡大、零売薬局の制度の行方を予測する


1.はじめに

厚生労働省の医薬品販売制度の検討会が2月22日に始まり、3月8日に第2回の議論が行われています。この会議は、規制改革会議の議論を受けて開催されていて、今後の医薬品販売制度のあり方について検討することを目的としています。

議論の行方によって、医薬品販売の規制が大きく変わっていくので、非常に重要な会議です。今回は、この会議の行方を予測します。

検討会の資料によると、今年7月までの間に1カ月ごとのペースで議論を行い、7月にとりまとめを行うことが予定されています。

検討会で議論されるテーマは以下のようなものがあります。
1)要指導医薬品の販売方法について
規制改革実施計画において、「医療用医薬品においてオンライン服薬指導が可能とされていることを踏まえ、要指導医薬品についてオンライン服薬指導の実施に向けた課題を整理する」ことが指摘されています。

【参考:医薬品の分類】
■医療用医薬品 →オンライン服薬指導(オンラインで薬剤師からの指導)可能
 ‐処方箋医薬品
 ‐処方箋医薬品以外の医療用医薬品
■要指導医薬品 →対面販売のみ
■一般用医薬品 →ネット販売可能
 ‐第1類
 ‐第2類
 ‐第3類

2)零売薬局の在り方について
医療用医薬品は、基本的には医師の関与がなければ販売できないのですが、一部については「やむを得ない場合」には薬局が処方箋なく販売できる零売という仕組みがあります。近年零売を専門とする薬局が増えていて、どのような場合に薬局が医師の関与なく医薬品を販売できるようにするべきかが議論となっています。
3)濫用のおそれのある医薬品の適正販売
近年、ドラッグストアなどで入手できる一般用医薬品の濫用が増加しています。一般用医薬品の濫用による緊急搬送も増えており何らかの対応が求められています。
4)デジタルによる遠隔での情報提供、店舗管理
2022年の規制改革実施計画において、店舗販売業の要件として、店舗販売者などの有資格者の配置を求めている今の制度について、遠隔に所在することについて検討するよう、指摘がされています。
参考(P79の5のc):https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/program/220607/01_program.pdf

第2回までの検討会で、1)要指導医薬品の販売方法について2)零売薬局の在り方、3)濫用のおそれのある医薬品の適正販売、について、厚労省の資料が出され、それに対して委員の意見が一通り出されたところです。

今回は公表されている資料や報道内容を踏まえて、関係者のスタンスや厚労省の意図を分析し、今後の制度の方向を予測します。

なお4)デジタルによる遠隔での情報提供、店舗管理については、「第58回:改革の流れを読み、今後に備える‐薬剤師によるOTC医薬品販売規制緩和の事例-」で一度解説をしています。興味がある方はぜひ読んでみてください

(執筆:西川貴清 監修:千正康裕)
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2.議題1:要指導医薬品の販売方法

現時点で示されている議論の内容は以下の通りです。

1)要指導医薬品の販売ルール
まずは要指導医薬品の販売ルールをどのようにすべきか、というのが一つ目の論点です。要指導医薬品には、医師の処方などの関与のもと利用されることが前提の医療用医薬品であったものが、薬局などで消費者が買える医薬品のジャンルに移行したもの(スイッチOTC)などが含まれます。薬局で買うことができる一般用医薬品はインターネット販売が可能ですが、要指導医薬品は現時点では薬局において対面でのみ販売することができる仕組みです。

【参考:医薬品の分類】
■医療用医薬品 →オンライン服薬指導可能
 ‐処方箋医薬品
 ‐処方箋医薬品以外の医療用医薬品
■要指導医薬品 →対面販売のみ
■一般用医薬品 →ネット販売可能
 ‐第1類
 ‐第2類
 ‐第3類

要指導医薬品は一般用医薬品よりも、慎重な服薬管理が必要だからオンライン販売をしないという理屈ですが、一方で理屈上はより慎重な服薬管理が必要である処方箋医薬品は、医師の診察があれば、インターネットだけで受け取りまで完了させることが可能です。

医療用医薬品は医師の関与がある一方で要指導医薬品は医師の関与がない、という違いはあるものの、より慎重な使用が必要なはずの医療用医薬品がオンラインで入手できるのに、要指導医薬品はそれができない、という状況がこれまであったわけです。

この要指導医薬品の販売の在り方について、冒頭示したような規制改革の指摘が入り、現在の検討が開始されているのが今の状況です

3.要指導医薬品の販売に関する関係者のスタンス分析

第2回の資料の議事概要はまだ公表されていませんが、ドラビズオンラインの記事によると、複数の委員が要指導医薬品のオンライン販売に慎重な姿勢を示した一方で、落合委員は、診療行為もオンラインであることを指摘し、要指導医薬品のオンライン販売の解禁にスタンスを置いているように読み取れます。
参考:https://www.dgs-on-line.com/articles/2021

意見が割れている場合、改めて後日検討会の議題となるのが通常です。この点、第2回の委員による指摘を見ると、複数の委員から対面販売を引き続き行うべき分類をあらたに作るべきという指摘が出ています。

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