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第106回:社会を変えるために「予算」を活用する!政府予算に民間の意見を反映させるために必要なスケジュールとキーパーソンとは

1.「予算」は人の行動を変え、政策の実行性を高めるツール


政府や自治体などが策定する「予算」とは、一言で言えば「金銭という動機付け(インセンティブ)を与えることにより、人々の行動を変化させるツール」です。

とてもいい政策があっても、それを裏付ける予算が無ければ、実際に効力を発揮できないことがほとんどです。

例えば「高齢者施設に、リハビリテーションの専門家を置くことで、高齢者の健康寿命が飛躍的に伸びる」ことが証明され、それを推奨する政策がとられたとします。しかし、その政策は予算化されておらず、施設側が専門家を置いても、補助金や介護報酬の加算などは得られません。

新たに専門家を置くためには当然、人件費などの費用が必要です。補助金が無ければ、利用者を増やす、他のコストをカットするなどの工夫をして費用分をひねり出す必要があります。もちろん「想い」を持つ施設の経営者は、そうした工夫をいとわず利用者の幸せのために設置するかもしれませんが、なかなか多くの施設に拡がるまでには時間がかかるだろうなあ、と想像できますよね。

しかし、仮に、健康寿命を延ばすことで長期的な社会保障費が減ることが期待される(※)として、専門家を置くことに対する補助金が予算化されたとします。そうなると、施設の責任者にとって金銭的なハードルは大幅に下がり、設置が劇的に拡がると推測されます。

(※)この例ではこのように仮定しましたが、健康寿命を延ばせば生涯の社会保障費が減るかどうかについては様々な意見があり、共通の見解は得られていません。

このように、「予算」は金銭的なインセンティブを通じて人の行動を変えることが出来ます。そして、それを通じて、政策の実効性を大幅に高めることができるのです。


2.予算には「スケジュール」がある


あなたが、高齢者支援に携わるNPOのリーダーだったとします。

「施設に専門家を置く」政策がもっと広がるためには、裏打ちとなる予算が必要だと考えました。ネットで調べたところ、各省庁が来年度の予算案を財務省に提出する期限は「8月末」と知ります。

そこで7月上旬、知り合いの厚生労働省の担当課長を訪ね、提案しまた。
すると「とてもいい提案なのですが、いまからだとちょっと来年度の予算には間に合わないかもなあ。。。」といわれてしまいました。

これは仮のケースですが、政策に関わろうと決めた人が割と早めにつまずくものとして、「提案のタイミングを間違える」ことは本当によくあることです。

予算は、毎年必ず作るものですから、このプロセスやスケジュールはあらかじめ決められています。民間から何らかの予算の実現を目指したいのであれば、予算のプロセスとスケジュールを理解しておくことが欠かせません。

具体的には、
・国が予算を作るタイミング
・政府内での予算決定プロセス
・予算決定のキーパーソン
を理解しておくことが重要です。

新しい予算を実現するには、いくつものハードルを越えていく必要があります。

「予算」は、広く国民の人から集めた税金の使い方を決める営みですので、政治家や政府の方針(骨太の方針など)、そして財務省からのプレッシャーなど様々な思惑が絡み、関係者も多数になります。

だからこそ、予算が出来上がるまでの表と裏のプロセスを理解し、皆さんの活動の参考にしていただければ嬉しいです。

(執筆:西川貴清、監修:千正康裕)


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(執筆:西川貴清  監修:千正康裕)

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