見出し画像

青山泰の裁判リポート 第20回 名門サッカー部の総監督は、男子中学生部員にわいせつ行為を繰り返した。

全文無料公開。スキマーク💛や、フォロー、チップなどをしていただける記事を目指しています。一人でも多くの方に読んでいただけると嬉しいです。

出廷した横山茂被告(仮名・30歳)は短髪で、少し伸ばしたもみあげと、あごひげをたくわえていた。チャコールグレーのスーツに白シャツ姿、黒縁メガネでビジネスマン風の雰囲気も。
スポーツマンらしく大柄で、姿勢もよく、爽やかな印象を受けた。

犯行の舞台となったのは東京の中高一貫校。
高校のサッカー部は強豪として知られ、全国高校サッカー選手権大会に9回出場し、10人以上のプロサッカー選手を輩出している。

そこで中学と高校の総監督を務める被告人が、サッカー部の男性部員4人に、合宿施設や遠征先のホテルで14回にわたり性的行為をした、と起訴された。

起訴された罪名は、
計6件に及んだ


罪名は多岐にわたっている。
不同意性交等、不同意わいせつ、準強制わいせつ、性的姿態等撮影、16歳未満の者に対する映像送付要求、児童買春・児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反。
横山被告による犯行の常習性と悪質さがうかがえる。

男子部員を呼び出して陰茎を触ったり、肛門に指を入れるなどのわいせつ行為をし、その様子を撮影。被告人のスマホには15人以上の少年の性的動画&画像が100点以上見つかった。

メンバー選考の最終
決定権を持っていた


被告人はサッカー部のトップで、メンバー選考の最終決定権も持っていた。
必死で練習している選手にとって、監督から嫌われることは絶対に避けなければならない。
「総監督の要求を拒めば、試合に出られなくなると思った」との被害者の証言も。

被害者たちは、恥ずかしくて家族や友人に相談できなかった、という。
横山被告は“SNSでのやりとりは消せ”などと口止めしていたが、一人の部員が母親と一緒に被害届を提出して、事件が明るみに出た。
最終的に被害を訴えたのは、13歳から16歳の4人のサッカー部員だった。

「裸を撮影したのは、筋トレの
成果を見るためだった」


横山被告は、性的欲求を満たすためという動機を否定した。
撮影を始めたきっかけは、部員のフィジカル強化のためだった、という。
他校の監督から勧められて、監督就任3年目から、選手の筋力トレーニングの成果を写真で比べるために、部員は上半身の裸を撮影して送付するように。

2020年頃から、部員が体にペイントを塗った写真を提出するなど、ふざけた画像や動画を送るケースが増えた。下ネタの動画を撮影することも不自然ではなくなったという。
横山被告は「筋肉の撮影は定期的に行った。部員がノリで下ネタとおもしろい動画を撮影して送ってくるようになった。下ネタ撮影が流行った」と。


行為は、次第に
エスカレートしていった


2021年の合宿では、筋力の成長を記録するという名目で、横山被告は5人の部員の裸体を撮影。被害者のA君は「何回も裸にさせられた」と警察に証言している。

横山被告の行為は、次第にエスカレートしていった。
翌年の合宿中にも、多くの部員が横山被告の部屋に集まり、AV動画を見て盛り上がった。その後、横山被告はA君を呼び、マスターベーションをさせて動画を撮影。
陰茎の皮をむかせたり、肛門に指を突っ込んで、前立腺を刺激し、マスターベーションを手伝うなどのわいせつ行為も撮影した、という。
また野球拳をしながら服を脱ぐ部員たちの動画も撮影している。

わいせつ行為は認めたが、
「被害者の同意があった」と


横山被告は、訴えられた事実をあっさり認めた。
しかし、肉体の撮影は「部員の体調管理が目的だった」と。
わいせつ行為は、体育会系の男同士のノリでふざけていて「被害者の同意があった」と主張。
「被害者たちは笑っていたし、私がいないときでも(撮影などを)していた」
自己の性的欲望を満たすのが目的ではなかった、と強調した。

「当時は(監督という)自分の立場をよく理解していなく、お笑いの動画として認識していました。
芸人がしているもの、部員同士がしているもの、私が関わっているものなどは、どれも一緒の行為だと。
私は、彼らの仲間で、アニキ的存在だと思っていました」

男性への性的興味については「まったくございません」と、完全否定。
しかし横山被告のタブレットには、同性愛に関する検索履歴が多数残っていた。
理由を問われると、「知人が出ているという情報があったので」と説明した。

”体育会系のノリ”では
決して済まされない


しかし、この犯罪は“悪ふざけのエスカレート”や、“体育会系のノリ”で済まされる案件では決してない。
立場が同じ仲間内の行為だとしても、真っ先にイジメが疑われる深刻なケースだ。

ましてや横山被告はサッカー部の総監督であり、メンバー選考の最終決定権を持っている人物である。
部員たちが「拒否したくてもできない」という心情になって、仕方なく応じたことは、充分に理解できる。
部員たちはまだ中学生で、試合に出るために一生懸命練習してきたのだ。
被害者たちが、心に深い傷を負ったことは想像に難くない。

4人の被害者は、全員
示談に応じていない


検察側は、被告人の行為を断罪した。
「総監督という立場を利用した、巧妙かつ、悪質な犯行。
被害者たちは他人に見られたくない動画を保存され、保護者たちも裏切られた」
懲役12年を求刑した。

横山被告は「自分を客観視することができなかった。最終的におかしな方向へ行ってしまった」と。謝罪の意思を示して、示談の申し出をしたが、被害を訴えた4人全員が応じていない。

2024年11月5日、裁判長が言い渡した判決は、懲役10年。
検察側の主張を全面的に支持した判決だった。

横山被告は動揺する様子は見せず、正面を見て丁寧に一礼した。
礼儀正しい印象で、判決に対して正面から向き合う姿勢を感じたのだが――。

いいなと思ったら応援しよう!