松尾天満宮のアコウ
長い年月、その土地の気を吸い上げて育つ樹木には、その土地それぞれの気風、風土が息づいている。高知県土佐清水市の四国最南端の岬・足摺岬は、黒潮本流が直接ぶつかる全国でも唯一の場所といわれる。
同地の松尾天満宮の亜熱帯樹林がうっそうと茂る境内には、三百年にわたって人々を見守ってきた目通り周径 約12m、樹高約25mのアコウの木が育っている。
アコウは、気根と呼ばれる枝のような根をを巻きつけ、岩や他の木に着生して成長し、最後には着生した木を覆いつくして枯らすことから「締め殺しの木」との恐ろしい異名を持つ。 国の天然記念物に指定されている松尾天満宮のアコウの巨木は、未だ生育旺盛。広大な範囲に枝葉を張りめぐらせ、まさにアコウの王者の貫禄をほこる。
和やかに癒やされるご神木とは異なり、足摺岬ならではの、土地の気・養分が、自然の生命の力となって湧き上がり、神木の勢い、荒魂(あらみたま)の神の樹木の形として私たちの前に姿を表し、独特の霊気を放ち。迫りくる気迫を感じさせる。巨木とじっくり対峙しながら、自分自身の活力を熟成し、明日への気力を奮い立たせてくれるご神木だ。