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【パパめが2】最強になった俺、女神と楽しく生きることに成功(7)
ある日の朝。
「で、出来た出来た! 出来たのよ!」
「あ? 何が出来たんだ?」
アストラエアが魔導書を放り投げて叫んだ。
何やら大喜びしている様子だ。
「えへへ、内緒」
「お前が喜びそうなことって、何か新しい画期的な魔法を開発したとか、そういうことだろ?」
「えっ、分かっちゃう?」
そう言って、アストラエアは照れくさそうに笑う。
「まあ、いいけど。危ないことはするなよ」
「うんうん、危ないことなんてしないよ!」
アストラエアはそう言ってウインクをした。
いつもながら可愛いヤツだ。
「それじゃ、今日も仕事をしますかね」
そう言って、俺たちはベッドから立ち上がり、冒険者ギルドに向かう。
掲示板に張り出されている依頼書を見るためだ。
「うーん、今日も平和だ。強い強ーいモンスターの討伐依頼とか、魔王軍に襲撃されている都市の救援とか、そう言った、血湧き肉躍るような依頼はもう降って湧いてはこないのかね?」
「あなたが並み居る魔王をぜーんぶ倒しちゃったからね。ま、私の支援あってのことだけど」
俺たちは適当に商隊の護衛任務の依頼を受けた。治安維持は大事だし、感謝されるし、何より、アストラエアと一緒に旅行気分で、話をしながらあちこち廻るのが楽しい。
商隊に合流して、夜はキャンプを張る。商隊のキャンプは遊牧民の大移動のようで盛大だ。野獣が近付いてこないように、各テント周辺にかがり火を炊く。このかがり火が盗賊たちをおびき寄せてしまう原因になるわけだが、まあ、そのための俺たちだ。
盗賊たちも、この商隊を守っているのが俺とアストラエアだということを斥候からの情報を得て知っているだろうから、手を出してはこないだろう。
平和だ⋯⋯。
俺はこの世界の夜空が好きだ。草原に寝転がって見る満天の星空なんか最高だ。
「リク、ここにいたの? 探したわよ。コーヒー持ってきた」
寝転がって星空を見ていた俺に、アストラエアが話しかけてきた。
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これこそスターバックスコーヒーってね
「今日も綺麗な星空ね」
「うん、星の並びが、俺がいた世界とは違うけどね」
「リクがいた世界にはどんな星座があるの?」
「そうだな、かに座、うお座、さそり座⋯⋯」
それを聞いて、アストラエアが口に手を当てて笑った。
「あはは、蟹や魚が星座になるなんて面白い」
「そうか? こっちの世界にはどんな星座があるんだ?」
「えっと、神様とか天使の星座が多いよ。ダイダロスとかエキドナとか、あと悪魔グレムリン、あ、それと竜もエルドラとか⋯⋯」
「うーん、聞いても分からないな⋯⋯」
「ね、他にどんな星座があるの?」
アストラエアは興味津々で俺に顔を近付けて聞いてくる。
「そうだな、俺は天秤座で、あと乙女座とか、水瓶座なんてのもあったな」
「へぇー、生き物じゃなくても星座になれるんだ。変なの」
あれ? 乙女座の女神の名前って、たしかアストラエアじゃなかったか? そして、乙女座の隣りの天秤座って⋯⋯。
不思議だな。偶然だろうか⋯⋯。
もしかして、俺の世界の宇宙と、この世界が、繋がっている⋯⋯。
アストラエアがにこにこしながら俺を見ている。
「何か考え込んでる。どうしたの?」
「いや、宇宙って、まだ分からないことだらけだな⋯⋯って」
アストラエアは俺と一緒に考え込みながら
「そうね⋯⋯。私とあなたが出会ったのもきっと⋯⋯」
そう言って、コーヒーを一口飲んだ。