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パパ活してたら間違って異世界に召喚されてお詫びとして女神とパパ活してたら人類最強になっていた件(8)

朝食はパンとサラダと卵焼きだ。
「美味しいわね、コレ」
アストラエアは美味しそうに食べている。
こうしていると、少しそこはかとなくパパ活の雰囲気がある。
交渉⋯⋯するか?
「おい、駄女神⋯⋯」
「駄女神はやめて」
「じゃ、何と呼べばいいんだ?」
「知らない。女神様か、アストラエアでしょ」
「駄女神は駄女神だろーが」
「だーめ。女神様と呼びなさい」
交渉が呼び方の交渉になってしまった。
そもそも、こいつと何を交渉するんだ? 交渉は今後の宿題にしておこう。
「あのさ、勇者ギデオンとやらはお前に飯を食うことを教えなかったのか?」
アストラエアは宙を仰ぎ見るような仕草をして、
「うーん、彼はそういう人じゃなかったから」と言った。
「そういう人じゃなかった?」
「黙々と生活して、モンスターと闘って、魔王を倒した、みたいな人」
「なんだ、そりゃ」
確かに、いきなり異世界に召喚されて、何をするかって言えば、元の世界に帰るための行動を黙々とこなすのが当然かもしれない。
「あなたみたいに初めて会った女神を強引に押し倒すような人はいないわー、引くわー」
「あのなぁ」
アストラエアは慣れた手つきで皿に盛られた芋をフォークで口に運びもぐもぐと食べる。
「おいしー、幸せ」
「まあ、いいけど⋯⋯」
「ふふふ」
アストラエアはニコニコしてこちらを見ている。
「で、魔王は勇者ギデオンによって倒されたんだろ? 何でまた俺が呼ばれたんだ?」
「それは⋯⋯、魔王が復活したから?」
「で、その魔王を俺に倒せと?」
「そうよ、召喚に失敗して、無理だと思ったけど、あなたなら倒せそう」
「嫌だね」
「え?」
駄女神には悪いが俺は魔王を倒すつもりもなければ、元の世界に帰るつもりも無い。何を好き好んで、この楽園を捨てて、魔王を倒すような苦労をしてまで、社畜に戻らなきゃいかんのか。
「魔王を倒せば元の世界に帰れるんだろう?」
「そうよ、魔王を倒したら私の上の神様が、あなたを元の世界に帰してくれるの」
「それは好都合だ。じゃあ俺が魔王を倒さなければ、俺はずっとこの世界にいられるんだな」
「でも、そんな人、今までいなかったけど⋯⋯」
「魔王なんか倒しても、この世界のお約束で何度でも復活するんだろう? じゃあ倒しても無駄だ。俺はこの世界で幸せに暮らすことにする」
「いいのかなぁ、そんなこと」
アストラエアは、釈然としない表情でパンをちぎってもくもくと頬張っている。
「いいんだ」
俺はそうして、この世界で駄女神と一緒に幸せに生きることを決意した。

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