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【パパめが2】最強になった俺、女神と楽しく生きることに成功(4)

というわけで、乳児の世話を担当することになった俺たちは、てんてこ舞いだ。

「はい、オムツ交換終わり」
「はい、粉ミルク終わり」
「はい、ええっと、何だっけ⋯⋯」

おぎゃあ、おぎゃあ!!

「わわわ、泣くな、泣くんじゃない」

アストラエアが泣いている赤ん坊を抱き上げて上手にあやす。

「あらあら、どうしたの? 急いで飲んで、お腹に空気が溜まっちゃったのかしら?」

そう言って、ゆらゆらすると、赤ん坊はゲップをして、すうっと穏やかな表情になった。

それを驚いて見ている俺。

「ふふふ、驚いた? 私は愛と母性の女神アストラエア。これぐらい出来て当然なのよ」
そう言って、勝ち誇った顔をする。

「いや、まあ、驚いたが⋯⋯。お前、いつから愛と母性の女神になったんだ?」

アストラエアは伏し目がちにフフッと微笑んで
「誰かさんが魔王を全部ドーンと倒しちゃって、世界が平和になってから、かしらね⋯⋯」

「そ、そうか⋯⋯」

おぎゃあ、おぎゃあ!!

乳児たちの空間には話をする暇もない。

「あー、オムツ換えないと。その前に、お尻拭く紙、いや、紙は貴重か、布、布と⋯⋯」

俺がてんやわんやしている間に、アストラエアはどんどんオムツ交換や哺乳瓶での授乳を手際よく終わらせていく。
どこで、覚えたんだか⋯⋯。

「ふふ、私だって準備はしているということよ」
「な、何の準備!?」

そんなこんなしている内に、エリーゼさんが来て、依頼の時間は終わった。これだけの数の乳児を面倒見ていたら、時間が経つのはあっという間だ。

「ふぅ⋯⋯、魔王より手強かったな⋯⋯」

そう言うと、アストラエアは俺の方を見て、ニコッとして言った。

「そう思う? 今は私もそう思うの」

ニャー

孤児院の外で子供たちと遊んでいたルミィが戻ってきた。乳児の部屋は動物禁止だから仕方ない。

遠くから子供たちの超えが聞こえる。

「ルミィちゃん、また来てねー!」

ルミィも嬉しそうだ。

俺たちは冒険者ギルドに戻って依頼完了の報告をした。そして報酬をもらい、宿に戻る。宿に戻ったら、孤児院への往路で聞こうと思っていた疑問を、アストラエアに率直に聞く。

「あのさ、アストラエア⋯⋯」

アストラエアは書物を読みながら紅茶を飲んでいる。

「な、何よ、急に名前を呼んで⋯⋯」
「俺たちの子供って⋯⋯、生まれるのか?」

アストラエアはそれを聞いて視線を宙にやって少し考え込んで⋯⋯

「うーん、多分だけど⋯⋯生まれると思う」

「思う?」

アストラエアは、宿の窓から青い空を指さして、星の公転のようにぐるぐると指先を回した。

「私たちはね、姿形は似ているけど、別の宇宙で生まれたの。だから、種が違うというより、本質が違う」
「本質?」
「うん、種はそんなに違わないのよ。多分、この世界の人間と、女神が交わったら、子供が生まれると思う。種はそんなに違わないからね。でも、そんな人間、今までにいなかったけど」

じゃあ、その本質ってやつが違うから、俺たちの間に子供は出来ないのか?

「うん、そういうことになる。姿形は似ているけど、私たちの身体を構成する、何もかもが違うのよ。私も最近気付いたんだけど⋯⋯」

「そうか⋯⋯」

アストラエアのその言葉を聞いて、俺は何だか力が抜けたような気持ちになった。落胆というやつだろうか。もしかして。

その俺の様子を見て、アストラエアは優しく微笑んだ。まるで、「安心して」とでも言うように。

「そう、気付きから全てが始まる。私は気付いたの。本質が違うのなら、その本質を再構築する魔法。転移魔法を応用すれば、宇宙の理を変えられる」

「宇宙の、理⋯⋯」
そうだ、それを言えば、俺がここにいるはずがないんだ。宇宙の理を変える。それが、転移魔法の可能性⋯⋯。

「変えられるよ⋯⋯、私たちなら⋯⋯」

そう言って、アストラエアは、キスをして、俺をベッドに押し倒した。ルミィが静かに部屋から出て行く音が聞こえた。
俺はアストラエアを抱きしめて、もう一度、キスをした。


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