見出し画像

【パパめが2】最強になった俺、女神と楽しく生きることに成功(6)

一方、その頃⋯⋯。
かつての魔国領アルデバランの山中で、頭に二本の角を生やした一人の男が、一人キャンプをしていた。
かつて、数百年前、「最強の魔力」と呼ばれた勇者であった男。今は魔王である。

その男はいつものように、一人キャンプをしながら、独り言を言った。
「宇宙が⋯⋯ザワついているな」

火がごうごうと燃えている。魔物の肉を焼いている。香ばしい匂いがする。
この男の名はセツナ。異世界から来た元勇者の魔王である。趣味は一人キャンプ。

⋯⋯⋯⋯。

そして、話はリクとアストラエアのいる王都グランドール、開拓亭に戻る。

リクとアストラエアは、いつものレストラン、開拓亭で楽しく食事をしている。

王都の開拓亭は老舗の人気レストランだ
値段は高い

「うーん、私たち、いつも贅沢しすぎかしら?」
「いや? そんなことはないんじゃないか? 普通だろ」
俺も現世にいた時にパパ活ばかりやっていた時のことを思い出して、そう言った。

「そう? そうよね? だって私たち、冒険者ギルドの世界最強パーティで、魔王を複数体討伐した伝説だもんね。お金もいっぱい持ってるし、毎日美味しいものぐらい食べてもいいよね?」
「そりゃあ、金は天下の回りもの、だからな。腐らせておくより使ってやった方が世の中のためにもいいだろう」
「そうよね、私、リクのそういうとこ好き」

とか言いながら、もぐもぐ食べるアストラエア。ワインも飲む。まあ、女神だけあって食べ方は上品で食べ過ぎることはない。

むしろ、問題は俺の方だ。こんなに何もせずに食べてばかりいたら太ってしまうし健康に悪い。平和のためにクエスト攻略と魔王討伐を繰り返していたが、今になって平和も考えものだと思う。

「それで、本当にもう魔王はいなくなって、世界は平和になったんだな? どこかに一匹ぐらい隠れていたりしないのか?」
「もういないわよ。魔王の魔素の反応が、この世界から完全に消えたもの。神界の方でも、この世界にもう魔王はいない、って報告が上がってきてる」
「じゃあ、なんだ。本当にもう、毎日美味いものを食べて、セックスするぐらいしか、やることが無くなってしまった、ってことじゃないか」

それを聞いて、アストラエアは面白そうに笑った。
「それでいいじゃない。それすら出来ない世界が、この、ううん、あらゆる幾千幾万の宇宙には、いくらでもあるんだから」

平和だった日本を思い出す。
飯が食えない人々、結婚出来ない人々⋯⋯。

「うん、確かにこういうのも、悪くないな」

俺は手元にあったワインを一気飲みした。

いいなと思ったら応援しよう!