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ソングライティング・ワークブック 第107週:いろいろな楽器に対して書くときにすること(6)

前回のストリング・カルテットに管楽器を足してみる。どんな可能性があるだろうか?

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混色とコントラスト

そのセクションの主人公はどの楽器(群)か?

まずは頭を整理する。前回書いたカルテットは短いので、場合によっては繰り返しを増やして長くすることも考慮に入れておく。

  • その音楽の区切りはどこか?

  • ある区切りからある区切りまで、どの楽器群(弦、木管、金管)を『主』にするのか?

  • 全楽器群が演奏する(通常クライマックス)のにふさわしいのはどこか?

古典的なオーケストレーションでは、全体を弦楽器主体で、ところどころコントラストを付けるために管主体のセクションを書く。その上で混色の度合いを調節する。

上は前回のストリング・カルテットから最初のテーマの部分を木管五重奏に置き換えてみたもの。

たとえば、上のように前回のカルテットをウィンド・クインテットに置き換えてみて使える場所がないか考えてみる。まず、メロディは何に受け持たせるのがふさわしいか?上の例ではオーボエになっている。もともとの曲想にある牧歌的な感じがより強調される。

もちろんこのような音楽であれば、メロディはオーボエ、残りは弦楽器のままで、あるいは、メロディはオーボエ、ベースはバスーン、内声は弦というのも可能だ。

問題は持続性で、ころころ立て続けに、この8小節は1stヴァイオリン、次の8小節はオーボエ、次はトランペットにメロディを、というのはあまりよい結果を生まないという気がする。歌伴なら、それもいいだろう。歌という主人公が一貫して存在するのだから。けれどインストの場合は、主人公が決まったら当面はそれを追うのが自然な流れだ。オーボエが主人公と決まったら少し追ってみる。

この譜例では9小節目から新たなセクションだけれど、そこでもオーボエをメロディとして使う。

上の例は弦伴奏の上でオーボエがメロディを演奏する形だけれど、次のセクションが低弦楽器とオーボエの会話になっている。ここで弦以外のものを加えるチャンスはあるだろう。また、先の例のように、木管で始めた場合、この会話のセクションで始めて弦を導入するということもできる。オーボエという主人公がずっといれば周りは変化することができるだろう。

原曲に忠実にするのか?楽器から新たに何か発想して改変するのか?

頼まれごとなど、条件によって、構成や和声やオブリガートなどを変えられないこともある。自分の曲でどうにでもなることもある。また、どれぐらい時間がかけられるのかによってもできることが変わってくる。

『従』の楽器群の音の役割

  • 一番目立たせたいところ(メロディなど)を強調する。

  • ピアノのサステイン・ペダルのような全体の響きを豊かにする。

  • 音色に密度を加える。

  • あるフレーズのアーティキュレーションを明確にする(アクセントを付ける)。

ヴァイオリンにフルートをユニゾンか1オクターブ上で重ねるというのはメロディを強調するときによく行われる。ヴァイオリンの1オクターブ下でバスーンを重ねることもよく行われる。

ホルンはサステイン・ペダルのような役割をよく受け持つ。白玉でよく使われる。

クラリネットは他の楽器とよく溶ける。弦と混ぜると音色が稠密な感じになる。

トゥッティをスケッチする

手始めにとりあえず一番盛り上がりそうな部分から、全部の楽器で演奏したらどうなるか考えてみると、大体の規模感がつかめるだろう。歌伴だと、トゥッティがない場合も多い(とくにスタジオで録音するものは)けれど、あれば、「なぜこのような大編成を使うのか」という正当性を与えることができる。

今回は木管と金管、それからコントラバスを1台ずつ加えてみる。弦も1本ずつなので、13人の奏者だけど、まだ室内楽の範疇と言える。

ざっと3通り考えてみた;

第1案は、カルテットのパートをほぼそのまま各楽器群に移して楽器の音域に合わせて調整したもの。極端な音域は使っていない。
第2案はコントラバス以外の弦楽器のパートにメロディを与えてかなり高い音で演奏させるもの。金管がハーモニーを埋める。
第3案は、トランペットとトロンボーンにメロディを与え(オクターブで重なる)、弦とフルートに新たな伴奏パターン(拍を刻むだけだが)を加えるもの。



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