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ソングライティング・ワークブック 第193週:Juan Formell y Los Van Van (4)

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クラーベとバックビート

前へ進んで行く感じ

ラテンミュージック、特にサルサを含むキューバ風のリズムを持つ音楽では、メロディもベースも波に乗るように前へ前へと進んで行く感じがある。

Faniaではなく、Motown(つまりリズム&ブルース)のミュージシャンを先に取り上げるけれど、Stevie Wonderにそういったラテンリズムを積極的に使った例として『Don't You Worry 'bout A Thing』(1973)という歌がある。

冒頭のリフの基本的なアウトラインはこうだ;

このラインが半拍先取りされて演奏される;

続く歌も半拍食って入るように歌われる;

イギリスにHoward Goodallという作曲家がいて、BBCやChannel 4で音楽の解説番組をやっている。『How Music Works』というChannel 4のシリーズがあるのだけれど、そこでラテンミュージックのリズムを説明するのに、実際のラテンミュージックではなくこのStevieの歌を例にとっている。輪郭がはっきりしていてミディアムテンポということで、とてもわかりやすいからだろう。

彼はここで、北米のジャズのメロディがよくビートの後(behind the beatとよく言う)に出てくるのに対し、ラテンではビートを先取りすると解説している。その後古いsonのスタンダード、Septet Nacional de Ignacio Piñeiroの『En Guantanamo』を紹介している。

Los Van Vanに『Don't You Worry 'bout A Thing』によく似たリフを持つ歌がある。『Resuelve』という、1976年に出た4枚目のアルバム『Los Van Van Volume IV』に収録されている。

『Don't You Worry…』に比べるとメロウでやや遅く、和声的な変化も複雑ではない。というか、よりこちらのほうが伝統的なブルースを意識しているようでI(Eマイナー)からIV(Aマイナー)に行っている。

それから、リズム&ブルースやロックでは2拍目と4拍目にスネアのアクセントが入る(バックビート)けれど、それをどこに入れようか思案していた節もある。ただし、倍に大きく取っている。つまり;

こうではなく、

こうである。

対して『Don't You Worry…』のほうがよりオーセンティックなラテンリズムを目指しているのは面白い。ドラムはWonder自身によるものだけれど、まるでバックビートを決して打たないという決心をしたみたいな叩き方だ。

『Resuelve』と同じぐらいのテンポの曲で3枚目のアルバムに入っている『Llegué, llegué』というのがあるけれど、こちらはクラーベとスネアの関係が聴きとりやすい。

こちらもブルースを意識したオルガンソロが入っている。

以下はついでだけれど、Tori Kellyという人が『Don't You Worry…』をカバーしているのを見つけた。こちらはあっけらかんとバックビートが入っている。


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