ソングライティング・ワークブック 第113週:古き良き32小節―「リズムチェンジ」を書いてみる
1940年以降の「リズムチェンジ」をいくつかざっと見てみる
Cotton Tail
Duke Ellingtonの『Cotton Tail』(1940年)の最初の4小節は、むしろ直接Gershwinの『I Got Rhythm』のメロディがインスピレーションだったのかな、という感じがする。9度(または2度、この場合はC音)と6度(G音)が強調されている。 GershwinのオリジナルがF-G-Bb-Cと上行し、C-Bb-G-Fと下降するのに対し、Ellingtonのは下降するほうのラインが残っている。
Real Bookの類では、ブリッジにはメロディが書かれていない。ジャムセッションでこの曲が演奏されるときは、ブリッジは即興されるということだろう。Ellingtonのオーケストラの演奏では、後半soliもshout chorusもあるのでしっかり書かれている―Ben Websterのテナーサックスソロもブリッジのところは書かれていたか、ある程度の準備がなされていたような印象がある。
Moose The Mooche
Charlie Parkerの『Moose The Mooche』(1946)はやや控えめではあるけれど、ビバップらしいジャンプ、蛇行、クロマティックな動きの多いメロディになっている。また、同主短調から借用した音(Gb音、Ab音、Db音)を使って滑らかさや甘さを与えるのもParkerの好みだったと言える。
Parkerにはもうひとつ有名なリズムチェンジ、『Anthropology』がある。
Oleo
『Oleo』(1954年)ジャズを学んでいる人たちに、たぶんリズム感トレーニングによく使われているテーマだと思う。Rollinsの関心がトリッキーなリズムに向いていたことがうかがえる。
Rhythm-A-Ning
Thelonious Monkにはシュールレアリズム的というか、キュビズム的というか、Stravinskyの『兵士の物語』なんかにも通じるような感じを、私は感じる。
Straighten Up And Fly Right
ここまでは器楽曲として書かれたもの(後で歌詞が付くこともあるけれど)をとりあげてみたけれど、リズムチェンジには、最初から歌として書かれたものもある。Nat King Coleの『Straighten Up And Fly Right』(1943年)がそれだ。
歌詞の話が面白い。説話に基づいている。ノスリはいつも周りの動物たちに楽しい飛行を誘い掛け、乗ってきた動物を掴み上げては高いところから落とし、自分の餌にしていた。そのトリックを知ったサルははわざとノスリの誘いに乗った。上空でノスリはサルを落とそうとするのだが、サルは尻尾をノスリの首に巻き付けているので落ちない。ノスリは「それでは窒息してしまう。尻尾をほどいてくれ」と頼むのだけど、サルは「またノスリが嘘を言っている」と思って尻尾をほどかない。