ソングライティング・ワークブック 第152週:Cole Porter(2)
近頃は何でもありだね(Anything Goes)
Cole Porterが関わった有名なミュージカルと言えば…
『Kiss Me Kate(キス・ミ―・ケイト、1948年初演)』だろうか?数々のミュージカルの映画化で有名なMGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)も1953年に映画化しているし、日本でも宝塚がやっていたように記憶している。ウィキペディアによると2019年まで何度もブロードウェイでリバイバル上演されているようだ。今では学校などでアマチュアによってもよく演じられているだろう。
それに劣らずよく上演されるミュージカルに『Anything Goes(1934年初演)』がある。むしろこっちのほうがよく上演されているのではないかと思われるほど、実は人気作だ。パラマウントによって1936年と1956年に映画化されている。1936年版はEthel Merman(エセル・マーマン)、1956年版はDonald O'connor(ドナルド・オコナ―…『Singing in the Rain(雨に唄えば)』での演技が有名だろうか)といったスターがいるし、Bing Crosby(ビング・クロスビー)は両方で主役を演じている。ただし、1956年版では物語が全くと言っていいほど変わっている。テレビ版もあるようで、こちらはFrank Sinatra(フランク・シナトラ)とEthel Mermanが主演しているらしい。
脚本制作(Guy Bolton、P. G. Bodehouse、Howard Lindsey、Russel Crouse)の当初からEthel Mermanをスターとして迎えることを想定して書かれていた。男性の主役のパートはむしろコメディアンとしての演技(作中身分をを隠すためにいろいろ変身しなければならない)を期待されて書かれたようだ。
Ethel Mermanが演じるのはRenoという役名のナイトクラブ歌手で、もともと主人公の男性に気があったにもかかわらず、彼の他の女性に対する恋を応援する。歌手なので、物語の筋と直接関係ない歌詞の歌でも歌うことができるので便利だ。ショービジネス自体が主な舞台でなくとも(『Chicago』や『A Star Is Born』などなど)、ひとり歌手という役があれば、ちょっと筋から離れた歌を歌わせることができる。こういうのは、Frank Loesserの『Guys and Dolls』でもやっている。
その、劇中で豪華客船でRenoがダンスチームを伴って歌う、ちょっと筋から離れた歌のタイトルが、このミュージカルのタイトルになっている。
Mermanが歌っているヴァージョンがSpotifyで見つからなかったので、2011年にSutton FosterがReno役をやったときの録音らしいものを貼っておく。
Mermanのほかの歌の録音が残っている。次回もう少し歌詞とメロディの関係など、深入りしてみたい。
Porter自身が歌っている録音もある。